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逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本14

燃え盛る逆転(14)

《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
X鞍馬満天(くらま・まんてん)……体操選手、大学構内で遺体が発見される
・智槍啓太(ちやり・けいた)……競輪選手
・大地翔(だいち・かける)……陸上選手、深夜3時にボヤを見つけて消火活動
・河童沙良(かわどう・さら)……水泳選手
・目樽望(めだる・のぞむ)……学長

▼シーン13(続き)

〈御剣〉「昨晩のボヤと先ほどの火事ではなにが違う?」
〈糸鋸〉「それは……火災の規模ッス」
〈御剣〉「そのとおり。犯人は昨晩の火事で目的を遂げるつもりだった。しかし、発見が早かったために火は燃え広がらず、だから目的を達成することができなかったのだ」
〈糸鋸〉「ボヤでは失敗ってことッスね。もしかして、なにかを盛大に燃やしたかったッスか?」
〈御剣〉「そうではない。とぼけた顔の弁護士がいつもいっているだろう。行き詰ったときには発想を逆転させてみろと」
〈糸鋸〉「発想を逆転……犯人はなにかを燃やしたかったのではなく、実は火を消したかった?」
〈御剣〉「いいぞ、刑事。その調子だ。火を消すためにはなにが必要だ?」
〈糸鋸〉「そりゃあ、水ッス」
〈御剣〉「そういうことだ」

 プールにたどり着く2人。素早く、更衣室の陰に隠れる。

〈糸鋸〉「なんッス? なんッス? どうしてこんなところに隠れるッス?」
〈御剣〉「静かに! プールをよく見てみろ」
〈糸鋸〉「……あれ? 水がほとんど入ってないッス」
〈御剣〉「消火に使われたのだろう。河童沙良が話していただろう? 2週間前に起きた火事のとき、水泳部はまったく練習ができなくなってしまった、と。大学内で火災が起こったとき、消防車はここから水を汲み上げ、放出することになっているのだろう」
〈糸鋸〉「もしかしてプールの水を抜いてしまうことが犯人の目的だったッスか? そのために放火を?」
〈御剣〉「被害者の格好を思い出してみろ。Tシャツがひどく濡れていただろう? 我々は汗だと思ったが、それは明らかにおかしい。被害者はトレーニングなど行なっていなかったのだからな。……おそらく犯人と格闘したとき、濡れてしまったのだろう」
〈糸鋸〉「あ……もしかして、鞍馬選手はここで殺されたッスか?」
〈糸鋸〉「そういうことだ。さらにここには、犯人が絶対に回収しなくてはならないものがまだ残っているはず――ほら、来たぞ」

 黒い人影がプールに近づく。息を殺す御剣と糸鋸。

                           つづく

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