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MAD LIFE 169

12.危険な侵入(2)

1(承前)

 改札口を抜けた洋樹は昨夜の話を続けた。
「……で、長崎は最後にいったんだよ。瞳に向かってね。『お前の兄さんに伝えてくれ……フェザータッチオペレーション』って」
「なんなんです? その〈フェザータッチオペレーション〉というのは」
「それを知りたいのは俺のほうだよ。だから、おまえにも訊いたんじゃないか。真知っていう女の子が、この名前を口にしたんだろう?」
「そう……そうなんです。真知が『家に帰るくらいなら死んだほうがましだ』っていうから、俺、『じゃあ死ね』っていってやったんです」
「過激だな」
「今の女の子がそれくらいのことで傷つくもんですか。そのとき、あいつが口にしたんですよ」

「殺してもらう! 〈フェザータッチオペレーション〉に殺してもらうんだから!」
「フェザータッチ……? なんだそれ?」
「昨日、あたしを追いかけ回していた男たちのことよ。あいつらが胸につけていたバッジにそう刻んであったわ」

「……じゃあ、なにか?」
 中西の話を聞いた洋樹はいった。
「〈フェザータッチオペレーション〉というのは暴力団のことなのか?」
「そういうことになるのかもしれません」
「ますます興味が湧いてきたな」
 洋樹はにやりと笑った。
「その真知って子の親父さんが、男たちに尾行を依頼したんだよな?」
「彼女はそういってましたよ。自分を見張るためにパパが雇ったってね」
「じゃあ、親父さんに訊けば、〈フェザータッチオペレーション〉の正体がはっきりするわけだ」
 光が見えた。
 洋樹はそう思った。

 (1986年1月28日執筆)

つづく

この日の1行日記はナシ


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