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MAD LIFE 202
14.コインロッカーのひと騒動(6)
2(承前)
「おい、真知! 待てよ!」
中西は慌てて真知のあとを追いかけた。
「真知!」
途中で、自分がタオル一枚を腰に巻きつけているだけだと気がついた。
しかも裸足のままだ。
しかし、そんなことにはかまっていられない。
中西はそれくらい必死だった。
3
〈フェザータッチオペレーション〉を出て自宅へ帰る途中だった中部は、富岡とばったり出くわした。
「警部!」
中部の姿を確認して、富岡が近づいてくる。
「こんな夜中に、なにをされているんですか?」
「いや……」
言葉を濁す。
富岡は中部が〈フェザータッチオペレーション〉の一員であることを知らない。
「おまえこそなにをしているんだ? 宿直だろう?」
「通報があったので捜査に出かけていました。近くの居酒屋で酔っ払いが無銭飲食をして逃げていったんです。この鍵を代金に充てろといってね」
そういって、富岡は〈23〉のキーホルダーがつけられた鍵を取り出した。
「この鍵は大金になるんだって喚いて、暴れていたらしいですよ。変人ですね。真夏に黒いコートを着ているんですから……たぶん、頭のねじがゆるんじゃってるんですよ」
……黒いコート。
小崎真知が接触した男も、確か黒いコートを身に着けていたはずだ。
彼女はバスの中で、何者かにスポーツバッグを手渡している。
その中身は……。
中部は目を見開いた。
「富岡!」
大声をあげる。
「その鍵を貸してくれ!」
(1986年3月2日執筆)
つづく
この日の1行日記はナシ