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MAD LIFE 081

6.女の勇気に拍手!(7)

1(承前)

 怖くないの?
 自分に問いかける。
 怖い……とっても怖いよ。
 それが正直な答えだった。
 だったら、どうしてこんな危険なことをするの?
 じゃあ、どうしろっていうの? このまま指をくわえて静観していろとでも?
 私はもう誰も不幸にしたくない。
 そのためには自分から行動しなくては。
 瞳は力強く頷いた。
 ただ悩んでいたって、なにも解決はしないのだから。

「今度は一体、なんだ?」
 長崎の不機嫌そうな声が耳に届く。
「ああ、うるさい! おい、早く様子を見てこい」
 長崎に命じられ、ふたりの男が小屋から飛び出していった。
 ひとりは小池だ。
 もうひとりはたぶん、黒川と呼ばれていた男に違いない。
 小屋の中にはあと何人いるのだろうか?
 ふたりが倉庫に向かったことを確認すると、瞳は一気に小屋まで走った。
 窓のそばに立ち、中の様子を覗き見る。
 部屋の中には長崎の姿しか見当たらない。
 彼はソファにふんぞり返り、テレビを観ている最中だった。
 ズボンのポケットからキーホルダーのようなものがはみ出している。
 そこにはいくつもの鍵が束ねられていた。
 もしかしたら、あの中に倉庫の鍵が……。
 しかし、長崎が持っているのでは、どうすることもできない。
 どうしよう?
 瞳は焦った。
 考えがなかなかまとまらない。
 早くしないと、小池たちが戻ってきてしまう。
 周囲に目をやり、凶器になりそうなものを探す。
 長崎はかなり酔っているようだ。
 不意をつけば、瞳にだって攻撃できるかもしれない。
 小屋の外には薪が積み上げられていた。
 その一本を手に取る。
 ずっしりと重い。
 うまく後頭部を殴れば、気絶させることくらいできそうだ。
 瞳は薪を両手で握りしめ、上下に振ってみた。
 薪の先端が積み上がった薪の束に当たり、派手な音を立てる。

(1985年11月1日執筆)

つづく

この日の1行日記はナシ



 
 

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