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MAD LIFE 375

25.最後の嵐(10)

 勝利の女神は郷田と八神に微笑みかけようとしていた。
「決着はついたな」
 郷田はにやりと笑うと、左脚を引きずりながら歩き出した。
 彼は右手に拳銃、左手に瞳を抱えていたので、瞳に八千万円の入ったスーツケースを持たせたようだ。
 銃口は常に瞳の頭を狙っている。
 その状態ではどうすることもできない。
 皆、黙って道を開けるしかなかった。
「八神、行くぞ」
「あ、ああ」
 八神は両腕にそれぞれ俊と真知を抱え、郷田のあとに続いた。
「真知……」
 徹は自分のそばから離れていく娘の後ろ姿を見ながら、なにもすることのできない非力な自分自身を責めていた。
 そして、その気持ちは洋樹も、中西も、浩次も、晃も同じだった。
「…………」
 とくに、ふたりの子供を人質に取られた洋順のショックは並大抵のものではなかった。
 誰ひとりとして手出しができないまま、郷田と八神は江利子の運転してきた車に乗り込もうとした。
 ……ここであいつらを逃がすわけにはいかない!
 今、やらなければ一生、後悔するだろう。
 洋樹は走り出していた。

(1986年8月22日執筆)

つづく

1行日記
とてもあと5ページで終わるとは思えない場面だな……

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