MAD LIFE 295
20.思いがけない再会(7)
3(承前)
洋樹は激しく動揺した。
というのも、突然、封印したはずの過去の記憶が鮮やかによみがえってきたからだ。
「友恵」
洋樹はぼそりと呟いた。
どうして急に、こんなことを思い出したのだろう?
一定の回転速度を保ち回り続けているレコード盤に目をやる。
流れている歌のタイトルは「追慕」。
「友恵」
洋樹はもう一度、その名前を呼んだ。
強く唇を噛む。
彼は当惑していた。
4
……ここは?
気がつくと、浩次は真っ暗な空間にただひとり立ち尽くしていた。
ここは……どこだろう?
どちらを向いても、黒い空間が際限なく続いている。
不安に慄き、思わず駆け出していた。
ここから逃げ出したいと思った。
だが、いくら走っても周囲の状況は変わらない。
額から流れ落ちた汗が目に入る。
急激に手足から力が抜け落ちていった。
その場に跪き、肩で息をする。
――浩次。
背後で声がした。
誰だ?
振り返り、目を見開く。
そこに立っていたのは立澤栄だった。
――浩次。おまえは俺と同じ運命を辿る。おまえはこの世のクズだ。おまえは狂った人間だ。
立澤は薄ら笑いを浮かべながら、浩次を汚く罵った。
おまえなんて生きている価値などない。おまえがいたらみんなが不幸になる。おまえは死ね。おまえはおまえはおまえはおまえは――
「うわあっ!」
(1986年6月3日執筆)
つづく