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逆転裁判 小説版未発表プロット17
逆転の道標(17)
《登場人物》
▼グリーンモンスター……5人組お笑いユニット。全員が怪物に扮し、どたばたコントを演じる。舞台を中心に活躍。全国各地を忙しく駆け回っており、デビューわずか1年で観客動員数50万人を突破。昨年までメンバーそれぞれが、まったく異なる職業に就いていたことも話題となっている。イメージカラーは緑。
〈メンバー〉
・モンスターキング……元スタントマン、鷲鼻を緑色にペイント、炎恐怖症、被害者
・モンスタークイーン……元モデル、美女、右目の周りを緑色にペイント、高所恐怖症、被告人
・ドラキュラ……元医師、前歯を緑色にペイント、赤いコンタクトレンズを装着、得意芸はインチキ催眠術
・ウルフマン……元ギタリスト、聴力抜群、大きな耳を緑色にペイント、得意芸は爪楽器(つけ爪をこすり合わせて音楽を奏でる)
・フランケン……元レスラー、巨体、怪力、頭髪が緑色、ハムスター好き、得意芸はハムスターとのダンス
▼鈴木香菜恵……「逆転の架け橋」に登場、女子大生
▼矢田吹……「逆転の架け橋」に登場、やたぶき屋店主
8(承前)
〈御剣〉「なに?」
〈成歩堂〉「火事を報せる電話で目を覚ましたとき、視界全体が真っ赤に染まっていたらどうでしょう?」
〈真宵〉「真っ赤って……どうして?」
〈成歩堂〉「赤いコンタクトレンズだよ」[調書の写真を見せ]「普通、カラーコンタクトの中心部分は透明になっている。そうじゃないと、サングラスをかけたときみたいに、視界に色がついてしまうからね。だけど、ほら、遺体のそばに落ちていたレンズは中心部分まで赤く染まっていただろう? このコンタクトレンズをキングさんははめていた――いや、はめさせられていたんだ。そうすれば、見るものすべて真っ赤になり、火事と錯覚させることができるからね。たぶん、転落の衝撃で片目だけはずれてしまったんだろう」
〈ドラキュラ〉「違う! それは吾輩が落としたものだ! 舞台の照明がまぶしくて邪魔だから、視界全体が赤く見えるコンタクトレンズを特別に作ってもらい、それをサングラス代わりに使っていたのだ!」
〈成歩堂〉「一度はベッドへ入ったというのに、コンタクトレンズをはずさなかったんですか?」
〈ドラキュラ〉「起きたあと……またはめたのだ」
〈成歩堂〉「ナイトガウン姿で練習をしていたのに、コンタクトだけはめていたというんですか? ウルフマンさんのつけ爪やフランケンさんのハムスターの餌は、芸に必要なアイテムですから、練習のときも手放せなかったでしょう。だが、あなたのコンタクトは違う。なくたって、なにも困りはしません」
〈ドラキュラ〉「…………」
〈成歩堂〉「キングさんを寝室まで運んだのはあなたです。そのとき、彼の目にコンタクトを装着したんですね? 無理にまぶたを開かせたわけですから、その瞬間は目を覚ましたかもしれません。しかし、キングさんは泥酔していました。自分がなにをされたかもわからず、また眠ってしまったんでしょう」
犯行の手順を事細かに説明。
ドライアイスと氷は保温性の高い容器に入れて、ほかの小道具と一緒に置いておく。ミーティングの最中にこっそり部屋を抜け出し、ドライアイスと氷をバケツにセット。
ミーティング終了後、自分の部屋へ戻り、ひと眠り。ウルフマンが「もう一度飲み直そう」とやって来るのはいつものことなので、それを利用してみんなを裏庭へ誘う。
パーティールームのドア付近を随時チェック。白い気体がドアの外へ漏れ出すのを確認したら、トイレへ行くといってその場を離れる。タクシー乗り場の公衆電話から、キングに連絡。『火事だ! すぐに逃げろ!』と叫ぶ。
〈成歩堂〉「部屋は異様に暑く、しかもコンタクトレンズのせいで視界は真っ赤に染まっていました。ドラキュラさんの言葉を疑うはずもありません。火事にトラウマがあるキングさんは、慌てて部屋の外へ飛び出した。パーティールームに充満した煙。彼は慌てて建物の外へ逃げようとして、ドラキュラさんがあらかじめ鍵を壊しておいた非常口から飛び出し、死んでしまったんでしょう」
〈御剣〉「異議あり! ドアには大きく《立入厳禁》と書いてあったのだぞ。いくらパニックに陥っていたからといって、間違えてそこから飛び降りたりするものか!」
〈成歩堂〉「いいえ。ドアの貼り紙は、白地に赤い文字で記されていました。赤のフィルターを通せば、文字は消えてしまいます。彼には《立入厳禁》の文字が見えなかったんですよ」
〈御剣〉「ぬぬっ……。いや、待て。それでもまだ不自然だ。被害者の部屋からなら、非常口へ向かうよりガードマンたちに助けを求めたほうが早い。なぜ、そうしなかったのだ?」
つづく