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逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本18

時の館の逆転(2)

《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
・時田針之輔(ときた・しんのすけ)……高級時計メーカー《トキタ》の創始者であり、現会長、脚が悪く車椅子の生活を余儀なくされている、コレクションルームはアンティークな柱時計や置時計であふれかえっている、規律に厳しくとくに時間にはうるさい、息子の時田龍頭を殺害、77歳
X時田龍頭(ときた・りゅうず)……針之輔の長男、《トキタ》社長、経営不振の打開策として会社を売却しようと考えている、何事にもルーズな性格、被害者
・幸丸事郎(ゆきまる・じろう)……針之輔の身の回りの世話をしている執事

▼シーン3

 パーティー会場に戻って来る針之輔。

〈客〉「おっ。主役のお帰りだ。時計たちは元気だったか?」
〈針之輔〉「ああ。みんな、笑顔で出迎えてくれたよ」

 幸丸からワインを受け取る針之輔。

〈針之輔〉[笑顔で]「なんだかとても気分がいい。今夜は朝まで飲み明かすことにしよう」

▼シーン4

 翌朝。駐車場の隅に横たわる龍頭の遺体。そばに血のついた鉄パイプ。遺体の近くには外灯が立っている。
 捜査中の御剣と糸鋸。

〈糸鋸〉「今朝、マンションに住む男性が、犬の散歩の途中で見つけたッス。殺されたのはゆうべッスが、遺体は車の陰に隠れていたので、朝まで見つからなかったみたいッスね」

 そばに停まった派手なスポーツカーを見やる糸鋸。近くに煙草の吸殻が大量に落ちている。

〈糸鋸〉「被害者は時田龍頭。世界的に有名な時計メーカーの社長ッス。実は、自分もトキタの腕時計をはめてるッスよ」

 得意げに右腕の時計をみせびらかす糸鋸。

〈御剣〉[時計に目をやり]「刑事。いくらでこれを買ったのだ?」
〈糸鋸〉「あ。あまりにもいい品だから、御剣検事もほしくなったッスか? なんせ、7万円の時計ッスからね。それがなんと特別価格5000円ッスよ。給料が出たばかりだったので、ソッコーで購入したッス。いやあ、いい買い物をしたッス」
〈御剣〉「文字盤をよく見てみろ。メーカーのロゴがトキタじゃなくてテキトーになってるぞ」

 TokitaがTekitoに。

〈糸鋸〉「ええ? そんなバカな! うわあ、針が取れたッス! ゼンマイが飛び出したッス! ひいいっ! ついでに、なんだかわけのわからないものまで飛び出してきたッス! なんてテキトーな時計ッスか!」

 パニックに陥る糸鋸を無視して、遺体を調べる御剣。

                           つづく


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