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下手の横スキー69
第69回 ザウス・その後
ようやっと、僕も初滑りに行ってきましたよ。
今回はその話を書こうと思っていたんですけど、見事になにも思いつかない。
「あたたたたたっ! おまえはもうシンデレラ」
という駄洒落を、リフトの上で思いついたこと以外、とくに書き記すエピソードはありません。
というわけで、今回はこのへんで。
さよーなら~♪
という原稿を書き、そのまま送信しちゃおうかと思ったんですが、気弱な僕にそんなことはできませんでした。
さ、なにか書かなきゃ。
…………。
うおおおおおおっ!(無理矢理テンションを上げた)
いよいよシーズン到来ですよ!
この原稿を書いている12月14日現在、まだ近隣のスキー場にほとんど雪は積もっていません。しかーし、今週末からスキー漬けの毎日が始まります。
まずは2泊3日の指導員研修会。ゲレンデに雪があろうとなかろうと、これだけは絶対参加しなくちゃなりません。そーしないと、苦労して取得した指導員の資格を剥奪されちゃうんです。
雪がないのにわざわざスキー場まで赴いて、あれこれ指導を受けるのはつらいけど……ううん、大丈夫。今週末にはぐっと冷え込んで、きっとあたり一面雪景色になるさ。絶対になる! なるったらなる!
さてさて。そんなわけで、これからのシーズンは雪山にこもってしまうことが多くなる黒田。当然ながら編集者との連絡もとりにくくなるため、今のうちにということで、先日、上京した際に、各社と怒濤の打ち合わせを行なってまいりました。こうやって書くと、なんだか売れっ子作家みたいですが、本当のところは「これからも見捨てずに、仕事をちょーだいね」と頭を下げまくってきた次第。
そんな中、たまたま千葉県船橋市に出かける用事ができ、京葉線に乗って南船橋へと降り立ったのですが……。
あ、あれ?
改札口を通り抜けたところで、既視感にとらわれました。
この景色、なんだか見覚えがあるぞ。
今までまったく気づいていなかったけど、もしかしたら僕の生まれ故郷は船橋市? ってことは、僕は船橋市出身の山下智久? そーか。そーだったのか。以前から山下君に瓜ふたつだと騒がれていたけど、まさか僕自身が山下君だったとは。
おかしな妄想にとりつかれ、「抱いてセニョリータ」を熱唱しながら、駅を出ると、をををっ! 目の前に「IKEA」と表示されたどでかい建物が。
「こ、これは!」
衝撃を受ける黒田。
「イケメン(I)黒田(K)の笑顔(E)を愛してる(A)?」
「違います。スウェーデン発祥の大手家具店です」
通りすがりの見知らぬかたが親切に教えてくれました。
「あの馬鹿でかい建物すべてが家具店?」
「ええ。数年前までは屋内スキー場があったんですけどね。それを取り壊して建てられたんです」
あ、納得。
どーりで、周囲の景色に見覚えがあるはずだ。ここはかつて、「スキードームSSAWS(ザウス)」のあった場所なんですね。
うわあ、懐かしいなあ(ザウスについてはこのエッセイの第32回を参照のこと)。
「銀河鉄道999」に登場するような、あの高架橋型の建物は、もうどこにもなく、その代わりに青と黄色にペイントされた大きな店舗がどどぉん。
あの夢の楽園ザウスを潰して作られた家具店というのが、一体どの程度のものなのか、じっくり見学してやろうと思い、店内へ。
一歩、足を踏み入れてびっくり。
うおっ、うおっうおっ。これってホントに家具屋さんなの? まずはその広さに圧倒されちゃいましたよ。珍しい家具が贅沢なスペースに展示されており、しかも巡回コースまで決まっていて、なんだか博物館みたい。
ブースごとに統一された家具が置いてあって、高級モデルルームを見学しているような気分。
うわあ、こんな家具に囲まれて暮らしてみたいなあ。……置く場所ないけど。
あっ、この本棚、かっこいい! ……我が家には思いきり不釣り合いだけど。
うーん、いいなあ。ほしいなあ。高級そうに見えるのに、めちゃくちゃ安いんですよ。それこそ、貧乏作家にも充分に手が届くお手頃価格。
だけど、これらの家具を揃えようと思ったら、それに見合う家が必要となってくるわけで……。
「よっしゃ! バリバリ働いて、お金持ちになって、将来的にはこーゆー家具が似合う家に住んでやるんだいっ!」
と、なんだか気合いが入っちゃいました。
一番驚いたのはレジ前の倉庫。「ここまで客にやらせるか?」ってくらいの超セルフサービスぶり。ほしい家具をチェックしたら、それを巨大倉庫から引っ張り出してきて、客自身がレジに持っていくシステムなんですけど……うひゃあ。倉庫の馬鹿でかさに口をあんぐり。棚の高さは10メートル以上(たぶん)。上のほうに置いてある家具は、どうやって手に取ればいいんですか? 一人じゃ到底持ち運びできない商品ばかり。しかも、かなりの大型車を持っていなければ自宅へ持ち帰れないし。なにからなにまでダイナミックだなあ。
家具だけでなく、インテリアや小物も充実してました。店内のいたるところに、ヘビのぬいぐるみが積んであったけど、あれってホントに売れてるんでしょーか? もしかして仕入れすぎた? カゴの中に詰まった大量のヘビ。可愛い顔をしているとはいえ、あそこまでうねうねうねうねしていると、さすがにちょっと気持ち悪い……。
手ぶらで店を出るのも気が引けたので、掛け時計を買っちゃいましたよ。へんてこりんなデザインで、結構気に入ってます。誰かへのクリスマスプレゼントにしようかなあ。定価150円だけど。
ザウスがなくなっちゃったのは悲しいけど、これはこれで面白いなあと思った浮気者の黒田。しかも、イケアのすぐ近くには超巨大ショッピングモール「ららぽーとTOKYO-BAY」があって、こちらのでかさにもあ然ぼー然。入った途端、迷子になっちゃいましたよ。すべてのフロアをじっくり見て歩こうと思ったら、丸2日はかかるんじゃないかなあ。
船橋、いいよ。気に入っちゃったよ。ディズニーランドも近いし、東京までもあっという間だし。家賃もさほど高くなさそうだし。
……え? いつまで船橋の話をしているんだ? これはスキーエッセイじゃないのかって? おっしゃるとおりです。これぞまさしく、船橋の無駄話。ばんざーい、ばんざーい。
……もしかして駄洒落にもなってない?
と、思いきりグダグダなまま、今年最後の「下手の横スキー」は幕を閉じるのでありました。
では皆様、女医のトシ子。あ、間違えた。よいお年を。ホントにグダグダだな。