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MAD LIFE 148

10.思いがけない訪問者(11)

4(承前)

「女がひとり訪ねてきただろう?」
 長身の男がいきなり玄関口へ入りこみ、あたりを見回しながらいった。
「女? 知りませんよ」
 中西はとぼけて頭を横に振る。
「隠すとためにならねえぞ」
 背の低いほうは中西の真正面に立ち、凄みをきかせながらいった。
「なんにも隠しちゃいませんって」
「嘘をつくな!」
 背の低い男はそう叫ぶと、中西の胸倉をつかんだ。
「やめろ、郡」
 長身のほうがもう一方の肩を叩く。
「嘘かどうかは調べればわかることだ」
 男は靴のまま、家の中へ上がりこんだ。
「おい、やめろ!」
 中西は男に飛びかかる。
「うるせえんだよ」
 背の低いほうが中西の顔面に拳を入れようとした。
 素早い動作で、その拳を受け止める。
「俺を甘く見るなよ」
 中西はそう口にすると、つかんだ男のうでをひねりあげた。
「いて。いてててて」
 苦痛に歪む男の顔。
「きさま!」
 長身が飛びかかってくる。
 中西はすかさず男の腹を蹴り上げた。
 長身の男は空気の漏れるような音を口から漏らしながら、その場に倒れ込む。
「宇野! 大丈夫か?」
 背の低いほうが心配そうに叫んだ。
「この男を連れて今すぐ出ていけ!」
 中西はそう怒鳴った。
「なに?」
 男がものすごい形相で睨みつけてくる。

 (1986年1月7日執筆)

つづく

1行日記
うわーお、明日から3学期だよーっ!

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