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MAD LIFE 271

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(15)

 翌日。
 まだ夜が明けきっていない頃。
 なぜか目が覚めてしまった洋樹は、布団を抜け出して外へ出た。
 東の空がぼんやりと明るい。
 洋樹は大きく息を吸い込み、ため息とも安堵ともわからぬものを吐き出した。
 早起きの人々を乗せた電車が雄叫びをあげる。
 その音を聞いた途端、この夜明け前の街を無性に走りたくなった。
 ……これで終わったんだよな。
 準備体操をしながらそんなことを考える。
 太陽が顔を出し、あたりは急に明るくなった。
 ひさしぶりに味わうすがすがしい朝。
「おはようございます」
「やあ、おはよう」
 新聞を配る高校生くらいの少年と挨拶を交わす。
 どこかから犬の鳴き声が聞こえてきた。
 散歩に連れていけと主人にねだっているのかもしれない。
 平和な日常。
 平和すぎる日常。
 ……終わったんだ。
 洋樹はもう一度、心の中でそう呟いた。
 多少のしこりは残ったものの、ひとまず事件は幕を閉じた。
 今日も暑くなりそうだな。
 目を細め、東の空を仰ぐ。

 (1986年5月10日執筆)

つづく

1行日記
FUN CITY~♪ うーん、いいねー! ちなみにこれ、20枚目のシングルです!

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