1996ベストミステリを語る 07
速報!「週刊文春」ベスト10(96 12/26)
「『週刊文春傑作ミステリーベスト10』が発表されましたね」
「これが発表されると、ああ、本当に年の瀬も押し迫ったって感じね」
「じゃ、そういうわけで、駆け足でベスト10を発表しちまいましょうか」
「はぁい。まずは10位! じゃじゃん」
「『凍える牙』。直木賞獲った影響がモロにあるんでしょうね。『このミス』ではほとんど票が集まっていなかったんですが、こちらでは10位にランクされましたぁ。男と張り合う女刑事ってのはちょっと食傷気味だったけど、犬好きの僕はつい評価を高くしてしまう(笑)作品です」
「続いて9位……を飛ばして同票8位が2作ね。『すべてがFになる』と『名探偵の掟』!」
「『名探偵の掟』に関してはいまさらコメントもいらないっすね。『すべてがFになる』がランクインしたことは非常に嬉しいっす」
「7位は? ぢゃぢゃん」
「『星降り山荘の殺人』。うーん、そんなにいいかなぁ、この作品」
「メインのトリックにはあたしも『やられたぁ』って思ったけど……」
「ここまで本格に徹した作品も最近では珍しかったからね。そのあたりが評価されたのかも」
「6位と5位は同じ作家よ。まとめて発表しちゃいましょう」
「6位が『絡新婦の理』、5位が『鉄鼠の檻』。相変わらず京極さんはすごいよねぇ」
「続きまして第4位!」
「『奪取』。藤田真利子さんの評には笑ってしまった。『偽金作りより、真面目に働くほうが楽そうだ』――まさしくそのとおりだと僕も思いました」
「3位!」
「『蒲生邸事件』。やっぱり上位は『このミス』と似たような作品が並ぶねぇ」
「と思っていたら第2位は!」
「『左手に告げるなかれ』。ま、乱歩賞が上位にくるのはいつものことなんで。僕は結構、この作品好きだし。著者近影も好きだし(笑)。村山実さんの評――『嫌っていたコンビニやスーパーに行ってもきょろきょろするようになってしまった』って……それってますますコンビニやスーパーが嫌いになったってこと?」
「さぁて、そうなると第1位は? ぢゃかぢゃかぢゃかぢゃかぢゃぁぁん」
「『不夜城』。『このミス』同様、2位とかなりの得点差があるね。20万部突破したらしいし、ますます売れるんでしょうな。来年あたり早漏ブームが来るかも……いい加減、しつこいか(苦笑)」
「包茎ブームが来ると、あたしたちも大手を振って歩けるんだけどね」
「ああ、それだけは言わんといてぇぇ(涙)」
解説
~週刊文春傑作ミステリーベスト10~
毎年末に「週刊文春」誌上に発表されるミステリーベスト10。日本推理作家協会会員のアンケートによってランキングが決まるらしい。歴史は「このミス」より古い。
~凍える牙~
「凍える牙」(乃南アサ*新潮社)
今年後期の直木賞受賞作。女刑事とオオカミ犬という異色コンビの活躍が話題となった。