宇宙戦艦ヤマト 復活編 33
最終章 戦士たちの帰還(1)
1
オゾンはときどき、過去の出来事を思い出す。
気が遠くなるくらい大昔の記憶なので、ほとんどなにもわからない。
しかし、おぼろげながらもそれはとてもリアルな光景だった。
「ねえ、ウラン」
花を摘みながら歌を歌っている彼女に声をかける。
「……ヤマト」
「え? なにかいった? オゾン」
ウランがこちらを振り返った。
シロツメクサの首飾りがとても似合っている。
「ヤマトって知ってるかい?」
「なに、それ? 食べ物?」
ウランは首をかしげる。
「いや……ふと、そんな言葉が頭に浮かんだんだ」
「ヤマト……」
そう呟いて、ウランは微笑んだ。
「よくわからないけど……なんだかとっても懐かしい感じがする」
ふたりのそばに小鹿が近づいてきた。
昨日生まればかりの赤ん坊だ。
小鹿はウランの身体に頬をすり寄せて甘えた。
「可愛い」
ウランがにっこりと笑う。
空から鳥のさえずりが聞こえた。
森に目を移すと、ウサギの親子が元気に駆け回っている。
「ねえ、オゾン」
ウランはいった。
「なぜ、私たちはふたりだけなのかしら? 他の生き物たちはあんなにもたくさんいるというのに」
小鹿の頭を撫でながらも、ウランの瞳は寂しげだ。
「私も子供がほしい……」
それはオゾンも同じだった。
だが、彼らは子供の作り方を知らなかった。
つづく