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MAD LIFE 332
22.歯車は壊れた(13)
5(承前)
「俊君……これを見て」
瞳は手に持っていた定期入れを開き、俊の前に差し出した。
中には一枚の写真が入っている。
そこに写っていたのは――
「……あ」
俊は手元の写真と定期入れの中の写真を見較べた。
どちらにも赤ん坊が写っている。
赤ちゃんなんてどれも同じような顔をしていると思うが、それにしたって顔がうりふたつだ。
双子か、そうでなければ同一人物だと思って間違いないだろう。
「……どういうこと?」
口を半開きにしたまま、瞳の顔を見る。
「どうして瞳さんがこんな写真を?」
「その赤ちゃん、私なの」
瞳はわずかに口の端を緩めていった。
「え?」
俊は大きく目を見開く。
「じゃあ……友恵っていうのは……」
6
「私、やっぱり心配だわ」
由利子が立ち上がる。
「どこへ行くつもりだ?」
「俊を捜してくる」
「待て、由利子」
洋樹は彼女の腕をつかんだ。
「おまえはここで待ってろ。俺が捜してくるから」
「でも、あなた――」
「大丈夫。俺のほうが俊をうまく納得させられると思う」
由利子は不満そうな表情を浮かべながらも、
「じゃあ……お願いします」
と口にした。
(1986年7月10日執筆)
つづく
1行日記
昨夜のカミナリはすごかったあ~!