一番最初の依頼原稿
2000年6月に『ウェディング・ドレス』(講談社ノベルス)でデビューしたあと、一番最初に原稿を依頼してくださったのは、学生時代に編集のお手伝いをしていた長野県松本市のタウン情報誌〈CityBoxまつもと〉でした。
大学の授業はサボってばかりのダメ学生でしたが、〈CityBoxまつもと〉での〈本作り〉のバイトはものすごく楽しく、ここで取材の方法や文章修行など、様々なことを学ばせていただきました。この会社との出会いがなかったら、もしかしたら今の僕は存在しなかったかもしれません。
残念ながら、〈CityBoxまつもと〉は2009年夏で休刊となってしまいましたが、僕の心の中にはいつまでもあのときの楽しい思い出が残っています。
みんな、元気にしているかなあ……。
どーも、おひさしぶりです。黒田と申します。
「誰だ、おまえ?」と、眉をひそめられた方もたくさんいらっしゃることでしょう。
実は私、以前「シティーボックス」で編集のお手伝いなどしておりまして、何度か皆様の前に駄文をさらしているんですね。
このたび、「ウェディング・ドレス」なるヒジョーに地味なタイトルの小説が、「メフィスト賞」なるヒジョーにマニアックな賞をもらいまして、たぶん今頃は細々と書店に並んでいるはずです。
「シティーボックス」での様々な体験は、僕に書くことの楽しさを教えてくれました。
「全然ダメ! 書き直し!」――そんな厳しいお言葉にベソをかきながら、明け方近くまで原稿用紙に向かったことも、どうやら気づかぬうちに大きな力となっていたみたいです。
「シティーボックス」で得たものは、それこそ山ほどにあったわけで、お礼を兼ねて(本当は宣伝してもらうことが目的で)、拙著を編集部宛てに送りました。
「これで松本の皆さんへのいい宣伝になるぞ」と思っていたのですが……甘かった。
返信されたファックスには「自分で書評原稿を書いてください」……う……(絶句)。
そんなわけで、辛く楽しかった松本での日々を懐かしく思い出しながら、必死に原稿を書いている最中です。
そろそろ枚数も尽きてまいりました。
作品の内容にもちょっとは触れるべきなんでしょうが、そんなことは恥ずかしくってとてもできません。書店で手に取ってお確かめください。
謎解きだけにこだわったびっくり仰天本格ミステリとだけ述べておきましょう。
と、こんなもんでよろしいでしょうか? 「全然ダメ! 書き直し!」と、どなり声が聞こえてきそうで、怖いんですけどね。
〈月刊CityBoxまつもと〉2000年7月号 掲載