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MAD LIFE 379

25.最後の嵐(14)

6(承前)

「今日は三人、おそろいか」
 洋樹は笑いながらいった。
「どう? この花、綺麗でしょ?」
 色とりどりの花を花瓶に挿しながら瞳がこちらを見る。
「この青いのは私が選んだんだよ」
「姉さんは青が好きなんだね。今日着てる服も青だもんな」
 そう口にしたのは俊だ。
「私も青、好きだよ。それにピンクも」
 はにかみながら恵美がしゃべる。
「あ。私もピンク、大好きだよ」
 瞳の言葉に、
「本当に?」
 恵美は嬉しそうに笑った。
「私とお姉ちゃんって気が合うよね。サクランボもプリンも好きだし」
「気が合うのは当たり前だろ」
 俊が口を挟む。
「姉妹なんだからさ」
 皆はお互いに顔を見合わせて微笑んだ。
 ……よかった。
 病室の天井を見上げ、小さく笑う。
 今、洋樹は大きな幸せを感じていた。
「そうそう、パパ」
 瞳がいう。
「ん? どうした?」
「今朝聞いたんだけど、中西さんと真知さん、もう結婚式の日取りを決めちゃったんだって」
「早いな。中西が社長の娘と出会ったのはつい二週間前のことなのに」
「スピード結婚だね。いいなあ、羨ましい」
 瞳の言葉に頷くと、洋樹は上半身を起こして瞳に顔を近づけた。

(1986年8月26日執筆)

つづく

1行日記
あ~書ききれなかった! というわけで1ページ延長!

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