見出し画像

逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本13

燃え盛る逆転(13)

《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
X鞍馬満天(くらま・まんてん)……体操選手、大学構内で遺体が発見される
・智槍啓太(ちやり・けいた)……競輪選手
・大地翔(だいち・かける)……陸上選手、深夜3時にボヤを見つけて消火活動
・河童沙良(かわどう・さら)……水泳選手
・目樽望(めだる・のぞむ)……学長

▼シーン13

 消火活動が終了。全焼した記念館。あたりは水浸し。

〈御剣〉「行くぞ、糸鋸刑事」

 記念館に背を向け、歩き始める御剣。あとを追いかける糸鋸。

〈糸鋸〉[不満げに]「一体、どうしたッスか? 大地翔の連行はほかの刑事に任せて、ついて来いって。犯人の連行なんて、そうそうできるもんじゃないんスよ。せっかくの手柄が台無しッス」

〈御剣〉「水を差すようですまないが、大地翔は鞍馬満天殺しの犯人ではない」
〈糸鋸〉「え? えええええ? それってつまり誤認逮捕ってことッスか? やばいッス。また給料を減らされちまうッス」

 唾を飛ばしまくる糸鋸。

〈御剣〉「落ち着け、刑事」
〈糸鋸〉「本当に大地翔は無関係なんスか? だって、彼のロッカーから怪しげな錠剤やアンプルが……」
〈御剣〉「もう一度よく考えてみろ。今回の事件の犯人は、なぜトレーニングホールに火をつけたのだ?」
〈糸鋸〉「さっき、御剣検事が説明してくれたじゃないッスか。連続放火魔に殺人の罪をかぶせるためッス」
〈御剣〉「そう――トレーニング中に放火魔の存在に気がついた鞍馬満天が、犯人を取り押さえようとして逆に殺されてしまった、と我々に思わせるためだ」

 頷く糸鋸。

〈御剣〉「では、先ほど起こった火事は? あれは誰がなんの目的で起こしたものだ?」
〈糸鋸〉「えーと……あれもやっぱり犯人――いや、大地選手の仕業ッスよ。捜査をかく乱しようとしたッス」
〈御剣〉「果たして、そうだろうか? 現在、大学構内は立入禁止。大勢の警察官に監視されている。そんな状態で火をつけても、自らの身を危険にさらすだけ。あまりにもナンセンスだ」
〈糸鋸〉「それはそのとおりッスけど……」
〈御剣〉「この状況で再び放火事件を起こすのは、ほとんど自殺行為といっていいだろう。しかし、それだけのリスクを背負ってでも、犯人には火をつけなければならぬ理由があったのだ」
〈糸鋸〉「どういうことッス?」
〈御剣〉「鞍馬満天を殺害した犯人が、トレーニングホールに火をつけたのは、連続放火魔に罪を押しつけるためだけではない。もちろん、それも理由の1つだったのだろうが、実はもっと大切な目的があったのだ。昨晩の火事ではその目的が達せられなかったから、今日、再び火をつけることにしたのだろうな」
〈糸鋸〉「ゆうべの火事では達せられなかった目的?」

                           つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?