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逆転裁判 小説版未発表プロット15

逆転の道標(15)

《登場人物》
▼グリーンモンスター……5人組お笑いユニット。全員が怪物に扮し、どたばたコントを演じる。舞台を中心に活躍。全国各地を忙しく駆け回っており、デビューわずか1年で観客動員数50万人を突破。昨年までメンバーそれぞれが、まったく異なる職業に就いていたことも話題となっている。イメージカラーは緑。
〈メンバー〉
・モンスターキング……元スタントマン、鷲鼻を緑色にペイント、炎恐怖症、被害者
・モンスタークイーン……元モデル、美女、右目の周りを緑色にペイント、高所恐怖症、被告人
・ドラキュラ……元医師、前歯を緑色にペイント、赤いコンタクトレンズを装着、得意芸はインチキ催眠術
・ウルフマン……元ギタリスト、聴力抜群、大きな耳を緑色にペイント、得意芸は爪楽器(つけ爪をこすり合わせて音楽を奏でる)
・フランケン……元レスラー、巨体、怪力、頭髪が緑色、ハムスター好き、得意芸はハムスターとのダンス

▼鈴木香菜恵……「逆転の架け橋」に登場、女子大生
▼矢田吹……「逆転の架け橋」に登場、やたぶき屋店主

 8

 証人席のドラキュラを睨みつける成歩堂。

〈成歩堂〉「ドラキュラさん。ひとつ、質問させてください。先ほど、ウルフマンさんは右脚を引きずって歩いていました。その理由をご存知ですか?」
〈ドラキュラ〉「はあ? 貴様は馬鹿か? 先ほど、ウルフマン自身が説明しただろう。パーティールームの照明が消えていたため、置いてあった洗濯機に足をひっかけてしまったのだよ」
〈成歩堂〉「パーティールームは真っ暗だったんですね?」
〈ドラキュラ〉「だから、そういっておるだろうが」
〈成歩堂〉「ドラキュラさん。あなたの発言は矛盾しています。あなたは嘘をついている」
〈ドラキュラ〉「失敬な。吾輩は生まれてこのかた、嘘をついたことなど一度もないわ」
〈成歩堂〉「あたりは真っ暗だったのに、クイーンさんがスプーンをドアのそばに置く姿だけは見えたというんですか?」
〈ドラキュラ〉「はんっ! なにをいっておる? 照明が消えていたのはパーティールームだけだ。キングの部屋の明かりはついたままだったのだから、クイーンの姿だってちゃんと見えたわい」
〈成歩堂〉「なるほど。キングさんの部屋の明かりはついたままだったんですね」
〈ドラキュラ〉「いかにも。それならなにもおかしくはないだろう?」
〈成歩堂〉「では、説明してください。ドアにはスプーンが挟まって、わずかな隙間ができていたはずです。キングさんの部屋の入り口には、ものすごく大きなシャンデリアが吊り下げてあって、目もくらむようなまぶしさで輝いていたんでしょう? それなら当然、ドアを閉めたあとも、真っ暗なパーティールームに明かりが漏れたのではありませんか? ドアがロックされていないことに、誰かが気づいてもおかしくありません」
〈ドラキュラ〉[焦りながら]「スプーンでできる隙間なんて、たかが知れている。き、気づかなかったってべつに不思議はないだろう。吾輩らは酔っぱらっておったしな。そんなことで嘘つき呼ばわりされるとは心外だ」
〈成歩堂〉「まあ、そういうこともあるかもしれません。しかし、それでもまだ納得できませんよ。クイーンさんはどうして、ドアが閉まらないようにするために、わざわざルームサービスで運ばれてきたスプーンなど使ったのでしょう? あの場でコーヒーが運ばれてきたのは、あなたが気をきかせてルームサービスを呼んだからでしょう? 最初からキングさんを殺すつもりだったなら、事前になにか用意しておくのが普通ではありませんか?」
〈ドラキュラ〉「そんなことをいわれても、吾輩に犯人の心理などわからぬわ。スプーンに傷がついている以上、彼女の仕業に間違いないだろう?」
〈成歩堂〉「本当にそうでしょうか? ホテルボーイからルームサービスを受け取ったのはドラキュラさん――あなたでしたよね? そのとき、スプーンをドアに挟んで、傷つけることだってできたはずです」
〈ドラキュラ〉「馬鹿馬鹿しい。曲がったスプーンなどクイーンに渡したら、彼女は大騒ぎするに決まっておる。あの女は口うるさいからな」
〈成歩堂〉「スプーンを渡さなければいいじゃありませんか。彼女はブラックコーヒーしか飲まない。だったら、スプーンなんて必要ありません。あなたがポケットの中に隠し持って、ミーティングがお開きになったところで、こっそりパーティールームの隅に隠しておけばそれでよかったんです」
〈ドラキュラ〉「おい。いい加減にしろ。貴様のいいぐさだと、まるで吾輩がクイーンを陥れようとしたかのように聞こえるぞ」
〈成歩堂〉「ええ。あなたが陥れたんです」
〈ドラキュラ〉「ふざけるな! 吾輩がどうしてそんなことをしなければならない?」
〈成歩堂〉「あなたがキングさんを殺害した真犯人だからですよ」

                           つづく

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