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EV化しても脱炭素にはならない理由

EVは走っているときには炭素を出さないが、走ったあと電力を使って充電する必要があり、電力を作る(発電する)ときに炭素を出すのでEV化しても脱炭素にはならない。
ガソリンエンジンの車とEVでのエネルギー消費と二酸化炭素の排出についてまとめてみた。

ガソリンを燃やすエンジンを使った場合でも、火力発電(石炭で計算)からの電力を充電してEVを走らせる場合でも、二酸化炭素の排出量は大差ない。
EVで脱炭素するためには、二酸化炭素を出さないクリーンな発電が必要。しかも、今後EVを増やすのであれば、EVを充電するためにそれに応じた(クリーンな)発電能力の増強が必要。

石炭を燃やす火力発電とガソリンの比較について、あまり情報がなかったので自分の化学と物理の知識をつかって調べてみた。
(LNGや石油を燃やす場合は数字が異なるが、単純にするため石炭を燃やす場合で比較した。)

石炭の場合
石炭の化学式:C
燃焼の化学式:C+O2→CO2
分子量:   12 32 44

これは、12グラムのCが燃焼すると44グラム(約3.66倍)のCO2ができることを意味する。
(CO2は気体だから軽いというイメージがあるが、酸素が2つ結合することでもとの炭素だけより重量は重くなる)

ガソリンの場合
ガソリンの化学式:C8H12(主に)
燃焼の化学式:2C8H18+25O2→16CO2+18H2O
分子量:    228     800    704

これは228グラムのガソリンが燃焼すると704グラム(3.09倍)のCO2ができることを意味する。
(つまり同じ量の石炭の燃焼に比較して、ガソリンのほうがCO2排出量は少ない)
(ガソリンはHが含まれている分、Hは燃焼してH2Oになるので、その分CO2が少なくなる)

ここからは燃焼エネルギーと効率の話:

1トンを燃やしたときに出るエネルギー(単位発熱量):(単位はGJ=ギガジュール)
 石炭(原料炭):29.9GJ
 ガソリン   :47.4GJ

同じ重さで比較すると、これはガソリンの方が石炭より59%発熱量(エネルギー)が多く、しかもCO2排出量は少ないことを意味する。

但し、発生したエネルギーがすべて使われるわけではないので、効率を考慮する必要がある。(ガソリンに比べて電力のほうが総合的な効率は良い。)効率は発電方式や自動車の場合は車種により異なるので概算である。
発電の効率は、発電所の効率と送電の効率とEV内の効率も含む。

1トンを燃やしたときに利用できるエネルギー=発熱エネルギー×効率
 石炭からの電力 :29.9x0.42=12.6(GJ/t)  (CO2排出量3.66トン)
 ガソリンエンジン:47.4x0.36=17.1(GJ/t)   (CO2排出量3.09トン)

電力は火力以外(例えば水力、原子力、再エネ)でも作っているので単純には言えないが、これらの結果から大雑把にいうと、石炭(火力発電)でもガソリンでも車が同じ距離を移動する場合のCO2の排出量はあまり違わないと思われる。(根拠は上記のように利用できるエネルギーがあまり変わらないから)

2019年時点の発電比率(化石燃料が約76%)
石炭:31.8%
石油: 6.8%
LNG :37.1%




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