8. 神の子の作り方―カインとアベル
題:神の子の作り方―カインとアベル
旧約聖書には、神の介在によって子を産む女性が何人か登場します。始祖アブラハムの妻サラ(創世記18:10; 21:2)、英雄サムソンの母(士師13:3, 24)、預言者サムエルの母ハンナ(サム上1:20)などです。これらの母たちの前例が、新約聖書の福音書のマリアの処女降誕伝説の原型となっていると考えられます。
では、神の介在によって子を産む最初の例はなんでしょうか。サラでしょうか。そうとは言い切れないのです。実はサラの前に、神の介在によって子を生んでいるらしき女性がいます。それはエバ(イブ)です。
エバは言わずと知れた、最初の人間アダムの伴侶です。アダムがエデンの園から追い出された後(創世記3:23-24)、エバは二人の子を産みます。カインとアベルです。
さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。(創世記3:1-2)
ここでは「知った」という用語によって、アダムとエバが生殖行為をしたこと示唆されています。その次に、エバは妊娠し、子を産んでいます。その子がカインです。
しかし、状況を複雑にしているのは、「わたしは主によって男子を得た」というエバの言葉です。これは余計なひと言です。なぜならアダムとエバの間の生殖行為とカインの誕生を因果関係で結べなくなってしまうからです。「わたしは主によって男子を得た」とのエバの一言は、人類最初の子種へのアダムの関与をかき消してしまっています。カインはアダムの子ではなく、神(ヤハウェ)の子なのでしょうか。
次男アベルの出自も謎めいています。「彼女はまたその弟アベルを産んだ」と書かれているだけで、その誕生へのアダムの関与が明らかにされていないからです。アベルもまたエバが「主によって」得た子なのでしょうか。
2021/01/18
作:Bangio