15. アレクサンドロスとアダム
題:アレクサンドロスとアダム
二日くらい前にふと思ったのですが、ポンペイ出土の『アレクサンダー・モザイク』と、ミケランジェロ作の『アダムの創造』の構図がとても似ているのです。誰かすでに指摘しているでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=wdgKVqTOyvk
『アレクサンダー・モザイク』の画面右、戦車に乗って、画面左のアレクサンドロス大王に右手を差し伸べる(ように見える)ひげを生やしたダリウス三世が、『アダムの創造』の右側、大きな布を背景にして右手を伸ばす神に似ています。神を運んでいる周囲の天使たち(?)の群れ方は、ダリウス三世の周囲に配置されたペルシャ兵のようです。
https://www.youtube.com/watch?v=PI0meIFA69M
『アレクサンダー・モザイク』の画面左、ダリウス三世より低い位置に置かれたアレクサンドロス大王は、『アダムの創造』の画面左で横たわる若者アダムのようです。アレクサンドロス大王もアダムも、やや左側に重心を傾け、上半身を開いています。そして両者とも画面右方向を向いた横顔で描かれています。
『アダムの創造』ではおそらく、神が、右手の指先でアダムに生命の息を吹き込もうとしているか、あるいは吹き込まれて身を起こそうとしているアダムを助けようとしています。他方、『アレキサンダー・モザイク』では、イッソス(あるいはガウガメラ?)の戦いで敗走するダリウス三世の右手から、世界の支配権が、若きアレクサンドロス大王に手渡されようとしているかのように見えます。
『アレクサンダー・モザイク』は19世紀にポンペイで発見されたので(モザイクの制作時期は紀元前1世紀ごろ?)、普通に考えれば、16世紀のミケランジェロがそれを目にできたはずはありません。『アレクサンダー・モザイク』の模写か複製が、別ルートでミケランジェロの目に入っていた可能性を考えたいところですが、そんな証拠は知りません。それとも、画面を大きく使って二人の人物の対面を劇的に描こうとすると、必然的にこのような構図になるのでしょうか。
2021/01/27
作:Bangio