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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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邦画観よ!@ベストエンタメアドベントカレンダー最終日

アドベントカレンダー参加者への謝辞・締め

自分で主催してきた通称「ベストエンタメアドベントカレンダー」、終わってみたら多くの方に「おススメのエンタメ」を出していただき、毎日記事が投稿されるのを楽しみにしていました。
買いやすいコンテンツにはするっと課金していたので、財布もすごく軽くなってますが!!

本当にみんな文章がお上手……
なんなら、note公式さんに紹介されてる記事まであってびっくりしました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました~!

本記事はそんなアドベントカレンダーの締め、最終日の記事になり、「自分個人が今年みた邦画で良かった作品」について触れていきます

(今年一番良かったアニメ映画は別途記事書いてるので、実写邦画の話です)

※なお記事サムネの写真は、記事内容のネタバレにならない範囲でそれっぽい画像を探したら、仕事部屋のミーティング用背景が一番良かったのでそれにしました。それっぽいだけで、記事内容とは関係ないです。

今年マイベストだった邦画観よ!

今年個人的に一番良かった実写邦画。
ずばり、カラオケ行こ!です。

公式キービジュアル。秀逸なキャッチフレーズ

予告編はネタバレがあるので、一旦貼りません
ネタバレありで良さを語るときに貼ります。

先に記事のネタバラシですが、自分が今年映画を色々見てて言いたいことは主に以下の3点で、これについて最後触れていきます。

  • 「邦画が頑張ってる」

  • 「映画館って良い」

  • 「映像観よ!」


「カラオケ行こ!」読も!

映画本編の前に、原作について。
漫画「カラオケ行こ!」の実写化作品。和山やまさん作で、「女の園の星」の方でご存じの方もいるかもしれません。
自分はご飯の席で「最近おもしろかった漫画」の話題になった時に、友人から結構プッシュしてもらった流れで映画を見る前に読みました。
原作、この一冊だけで完結しています。続編の「ファミレス行こ!」は本映画には関わってこないので、原作1冊で入門できます。

原作書影

800円で一冊買えばスタートできる、超お手軽原作入門
映画本編はNetfilxでサブスク配信中。AmazonPrimeVideo等で400円程でレンタル購入ができます。
映画本編を合わせても1500円もあれば原作含めて履修できるお手軽さ
チケット買って劇場行くのより安い価格で、今なら自宅で原作も映画も合わせて履修できるんです

是非!!是非にーーー!!

原作触れる前、書影の雰囲気からBLかな?と思ってましたが、その辺りは割と関係ない感じ。いや、読む人が読めばBLなんでしょうが、そこまで気にならないです。
原作を読んだ時は「良い読み味だけど、『くぅ〜〜〜!!』みたいなカタルシスまではいかなかった。でも一冊で勧めやすいなー」ぐらいでした。

これが映画になったらすごかった
見事すぎる実写化


以下、ざっくりあらすじ。

中学合唱部の部長をしている主人公が、ある日「組のカラオケ大会で、罰ゲームは嫌なので、最下位だけは避けたい」というヤクザから「カラオケ行こ!」と歌のレクチャーを請われる。
最初はヤクザ相手ということもあり嫌々付き合って適当にしているが……

思い出しながら書いた雑導入部分あらすじ

という感じの「ボーイ・ミーツ・ヤクザ」もの。
よく見かけるパターンですね!
(ホンマか?

ちなみに、同作者の別作品と合わせて原作はアニメ化される予定です。


本編良い!(ネタバレなし)

次項でネタバレありの話をするので、とりあえずネタバレしないところで話を。

視聴済みの多くの方が思うであろう、役者さんがピタリ役で良いんです
邦画特有の臭さはあっても、それがこの方向性の作品では大変に良い。

  • 邦画ヤクザ・チンピラばっかりやってるけど今回も独自路線の、綾野剛

  • オーディションで選ばれた新人。主人公役、齋藤潤

  • 原作にいない役なのに完璧に馴染んだ、宮崎吐夢

メイン二人の「これこれ!」感、すごい

上げたお三方がハマりすぎているが、特に宮崎吐夢さんの「いる…こういう父。というかこういう夫婦、絶対いる…」という気持ちにさせてくる演技。演技が合わせたのか、演技に合わせたのかはわからないが、宮崎さんに良い感じに描写する演出・カメラ。
(原作にない)家族の食事シーンを見ている時に湧いてくる「あぁ〜」という気持ちが本当にたまらない。

映画公式Xから。映画見てると「いるな…」という気持ちになってくる

「原作にない」とすでに書いてますが、主人公の家族関係はあまり原作には描かれてないんです。そして、その点含めた主人公周辺環境の掘り下げ演出・脚本が映画では本当に効いていた印象です
それゆえに、主人公に対してちゃんと気持ちがある程度入り込めるのが本作の魅力にも繋がっているのかと思います。
原作エピソードだけでは短くなり、淡白になりそうなところを、実写ゆえの情報量を使って周辺掘り下げをきっちりしていたのはすごく好きです。
監督・脚本などプリプロスタッフが光ってる……と視聴中なってました。

あとは舞台美術としてのカラオケ店の内装
ここぞという時にオブジェクトが効いてくる配置になっていたり、違和感がない程度にシーンごとの内装を変えていると感じていて、おそらく普通のカラオケ店ならそこにそれ置かないだろ!という内装なのに、でも自然になっていて、画の強さとあいまって見ている最中「良いぞ…ふふふ…」という謎目線になってました。
個人的に「鏡」がここぞという時に効いてきて「くぅ〜〜!良い〜〜」ってなってました。

非常にそれっぽい内装

全体のレベルの高さによって、原作の良いところがブーストされて「これこれ!邦画実写こういうの得意だよね!!」という気持ちがした本作でした。


ネタバレ読も!(ネタバレあり)

この項目、映画本編ネタバレあります。
ネタバレ読みたくないけど、このあとする「邦画とか映画館」の話が見たい人はすごい勢いでスクロールするか目次使って、次項まで飛んで!!
ネタバレここからあるからな!!
この項目は映画観た人か、ネタバレOKな人が見てよ!!



はい、ネタバレOKな人しかもういませんね
話を戻します。


原作に一切でてこない部活動「映画を見る部」が物語に2重構造を生み出していて、お話の深みをわかりやすく視聴者に理解させるのに一役買っていました

公式Xより。映画を見る部の様子

ちゃんとした部員が1名だけで、特例の幽霊部員として掛け持ちの許されてる主人公がたまにやってきている謎の部活。作中では細かな描写がないですが、会話の感じからすると「合唱部が休みの時にくる」ぐらいだったのかもしれません。
本当に映画を見てるだけの活動なので、一般的な「映画研究部」のような自分達で一本作ろう!的な様子はなく、淡々と作品をみて雑談が流れていきます。ただ、この「雑談」が非常に良い味を出してました

主人公、ヤクザが「紅」を歌うことにこだわってる理由が「女」じゃないかと疑う
→映画内の男女のロマンスシーンを見ていて「愛」とは何なのか雑談開始
→映画部生徒「愛いうんは、与えるもんらしいで」
→次のシーンで主人公家族の晩ごはん。母が焼き鮭の皮を剥がして顔も見ず会話もなしに父の方へ渡し、父はそれを茶碗の白米の上でキャッチする様子が主人公視点で描写される

思い出しながら書いた一連のシーン

もうこの一連の流れだけで視聴中、内心ゲラゲラ笑ってました。
「愛とは、焼き鮭の皮だったのか……」

流れるような文脈のしりとり。モーショングラフィックスのしりとりでもこんな綺麗なしりとりなかなかできないぞ
しかもこの文脈しりとり、非常に「女の園の星」に出てきそうで、原作者先生が書いたっぽさがあるんですよね。
大好き。

同じように映画部でのエピソードで、合唱部の後輩がさぼってる主人公を見つけて連れ戻そうとするシーン。
主人公が「声変わりという、本人が望まない不可逆な成長」をしているのを、「壊れて巻き戻しができなくなったビデオテープデッキ」を比喩として見事に掛けわせているなと
後輩が事情を知らずに、部長を連れ戻すためにと無理やり巻き戻しをしようとして壊してしまったのも印象的。「修復できない亀裂が生まれてしまった」示唆なんだろうなと。
しかもそれをきっかけに、原作とは違う形で「ヤクザの町」に主人公を踏み入れさせていて、転換点を生み出してました。そして本作屈指の名台詞かつ映画の裏テーマでもあろう「きれいなものしかアカンかったら、この街ごと全滅や」に繋がっていく。あまりにも美しい流れ……

物語の二重構造・入れ子構造を生み出す舞台装置としての「映画を見る部」の機能があまりにもよかったです。


原作にないといえば、合唱部の掘り下げも見事でした

公式Xより。合唱部シーンの、撮影中のオフショット

原作ではほぼ学校生活が描かれていなかったので、「打ち込んできた部活での不調」から徐々に「ヤクザとのカラオケ」に惹かれていく様子が足されたことで、説得力が増してのめり込みやすくなりました。
というか、(ヤクザは絡んでないけど)似たような経験が自分にあったので、あまりにもしっくりきすぎてビビってるんです。
部活の不調から、別のことに惹かれて〜の流れ、あるあるすぎて首がもげそうなP波もびっくりな縦振動が起きてました


本編、締め・オチもすごい好きなんですが、その締めでくぅ〜〜〜となってたら流れ出してくるテーマ曲

テーマ曲での終わり方が良すぎて、美しいがすぎる
「紅」の合唱含めたアレンジ。なんじゃこれ
良さを感じすぎて、映画館の椅子ごと大横転100回ぐらいしてしまいそうになる

やりやがった!!が詰まってるラスト。

こんなもんを劇場音響で聴いたら、映画館出た時の多幸感が異常でした。
本当によかった


んで、これら良さを良い感じに掻い摘んでギュッとして、全部まとめた予告の出来栄えよ

テーマ曲が流れるので上の方で貼れなかったんです。
90秒にまとめる作業大変なのに、綺麗になっててめっちゃ良い。


映画館行こ!(映画館に行こうという話)

ここからネタバレなしに戻ります。

さて、ここまで今年ベストだった邦画「カラオケ行こ!」について語ってきましたが、ここから少し絡めた別方向に話題を変えまして、「最近、邦画(実写)がすごいから、映画館に行こう」という話をします
アニメ映画もすごいものが多いですが、実写メインで少し話をします。

なんでここで映画館に行こうという話をするかと言うと、上のネタバレでかいてるんですが、テーマ曲を聴いた後に劇場を後にする多幸感がすごかったんですが、今年何作かその経験を邦画でしています。よく覚えてる2作を上げたいなと思います。


1作目、「4月になれば彼女は」でテーマ曲は藤井風さんの「満ちてゆく
作品内容は雑に分ければ「恋愛もの」ですが、予告の段階で「カメラ」が結構大事なアイテムになってそうで、予告から伝わる空気感含めて実写系映像を趣味で作る人間としてかなり気になってました。
実際「画面の良さ」が際立って良かった邦画だと思ってます。

実際に劇場で見ている時「あぁ~こういう終わり方ね~!」という状態から静かなピアノと藤井さんの声が流れてきたときの「あれ…じわじわとなんか来るな…?」という気持ちからの、大サビでの盛り上がりで「あぁ~~~!!最高!!」という気持ちにさせられてました
落ち着いた楽曲ですが、後半の盛り上がりがしっかりしている楽曲なので、劇場映えがすごいしました。
逆に、イヤホンで聴くと「劇場で聴いたときの感動が戻ってこない!!」となっていて辛い…


2作目、「ディア・ファミリー」。テーマ曲はMrs. GREEN APPLEの「Dear
こちらは実話ベースの「家族愛・感動もの」。
時間の都合がついたのと、評判が想像以上に良かったので実際に劇場に行きましたが、かなり印象に残ってます。
役者さんの知名度含めて映画館にいかない層にかなりリーチした作品で、ちゃんと黒字にできてるんじゃないかなと思います。

劇場で聞いていて本テーマ曲も「あぁ~こういう締めにこういう楽曲、超良い~~~!」となってました
映画本編の内容も前を向くようなものでしたが、こういう感じのすごい合いますね。
劇場出た時に「よっしゃ!感動もう一回頼む~!」という気持ちでイヤホンでSpotifyで再生を始めたときの「違う…イヤホンだと劇場の感動が出ない…」という気持ちがやはりこれでも起きました


そう、日本の映画館って「超良い音響設備が当たり前のように全国展開されてる」んですよね。少なくともイヤホンほど気軽な音響装置では出せない良さがあり、ホームオーディオでは出せない音量が出せるという時点で相当アドバンテージがあります。
「カラオケ行こ!」でもテーマ曲の良さをもう一回劇場で味わえたらという気持ちがかなりあります。

逸般の誤家庭で、一度DolbyAtmos環境での視聴を試して良かったけど、
劇場の音量にはやっぱり叶わない

後、これは歌もの楽曲にかかわらずですが、音楽のほとんどは「記憶・思い出とリンクしている」と自分は勝手に思ってます
自分の場合は映画や映像作品で使われた楽曲がすごい好きになるし、仕事柄・趣味制作の方向でも「MV」にふれる機会が多いので、「楽曲を聴くと映像が浮かんでくる」タイプの人間なので余計にです。(浮かんだ映像が自分の手で出力できるかは別の話)
ゲーム音楽を聴いても、あの時ああいうプレイしたなーみたいな思い出が湧いてくるタイプです。
ある意味では音楽を音楽そのままで楽しめないタイプとも言えるかもしれないですが、第一印象に引きずられるがゆえに、初めて聴く楽曲はできるだけ良い状態で聴いて記憶したいと思うのです

その点、映画館って最高なんですよね
最高の音響で、一番最後に大音量で流してくれるんですよ
しかもテーマ曲なので、映画本編という「音楽に紐づいた物語の記憶」がセットで
テーマ曲じゃなくても、作品に大事な音楽を大音量で流してくれるんで、印象に残りやすいのもあり、映画館で音楽を聴く行為というのは、イヤホンで聴くのとも、ライブで聴くのとも違う良さがあると思ってます

(劇場音響で聞けて記憶に残って良かった最たる例↓)


そして何より、今「邦画がかなり頑張っている」んですよね。

直近、メディア受け含めて記録的なものとしてはアジアで初めての「米アカデミー視覚効果賞」をとった「ゴジラ-1.0」が記憶に新しいですね。

今年公開作の実写邦画としては「ラストマイルが複数のテレビドラマのクロスオーバー作品として多くの新規層を映画館に引き込みつつ、現代社会の風刺も絡めた内容になっていたことで話題を呼んで、ロングランを果たしてます。

興行成績だけで言えば「変な家」は50億突破とのこと。
同じく今年公開でネット流行語大賞にも上がった「ガンダムSEED FREEDOM」の53億と数字の上ではかなり近いです
なんとなくどれだけ話題作だったのかが伺えます。

自分のベスト映画10本出して~と言われたら、絶対に入れたいという作品も結構最近の邦画があります。(仕事柄あまりベスト映画みたいなの表に出したくないんですが)

映画よりも尺も予算も使えるということで、配信プラットフォーム上でのドラマも日本産のものが盛り上がっていて「サンクチュアリ -聖域」「地面師たち」あたりは記憶に新しい人も多いかと
Disney+限定ですがSHOGUN 将軍もしっかりした歴史考証・監修が行われたドラマ作品としてこの一年でかなり話題になってました。(正確には日本人主導の洋画的作品ですが)

業界内からみてると、映画の制作費はもっとあれば色々できるのになーと思うことはあれど、興行成績を見てると多くの作品が微黒字になってる(回収だけしてるぐらい、大外しが少ない印象)だろうなというのを感じていて、次の大当たりを生み出すための下地がここ数年でしっかり整ったように感じています
特に、TOHOが海外配給に本腰を入れた投資をしていて、海外の賞レースに2025年からどんどん挑戦する作品が増えるんだろうなと感じています
(特にアニメ映画は制作現場に回すお金を増やすためにも、パイのサイズをデカくするために海外市場に殴り込まないといけないはず。実写もほぼ同様)
どんどん作品が展開されて行き、面白いものも増える素地が固まったのが2024年なんだろうなとうっすら感じています。


上記含めたいろんな要素が絡んでる上に、映画館側も「もっと観客に良い体験をしてほしい」という改良・施策をしていて、特に音響に強いシアターが関東圏はかなり出揃ってる印象があります。

他にも、(アニメ映画ですが)音楽と映像に主眼を置いた作品も今年公開されたりしていて、劇場で視聴することの価値はどんどん上がっているように感じています。(その分映画館の席代も上がってる印象はありますが)

(そういえば本作↓も「劇場で聴けて良かった」が詰まってた)


映画館で観ることは体験価値がすごい高いとかいうのを、どちらかといえば映画業界側の人間が言うのはステマっぽさがあって嫌だなーと自分で思ってます。
ただ、自分が業界にいて仕事してる理由って「映画が好きで、ここでならずっと仕事続けられそうだから」だよなとも思うので、こうして今現在映画館の価値が上がってるなと思うなら宣伝にならない範囲でちゃんと言うべきだよなって考えたのでここで書かせてもらいました。

音楽がキャッチーでわかりやすいのでそこをメインで記事後半を書いてきましたが、音楽方面以外でも「音響が良くないと体験できない良さ」というのを今年は「きみの色」で体感したこともあり(演技面が音響で強化されていた印象)、余計に「映画館で体験することの重要性」を感じています。


現代では映画に限らず映像はいろんな体験方法がありますし、2時間ほど映画以外のことができないデメリットもありますが、それが許容できる人は素直に映画館向きなので是非映画館に行きましょう

良い音響から入る映画体験というのもあるので、映画館で映画をみてください!!!!
是非、映画館で好きな作品と音楽に出会ってほしいです!!!!

映画館行こ!