バスタイムバルーン〜小さな青いビー玉といつかの花畑〜

湯気とともに登りゆく、
いくつかのバルーンはパステルカラー。

まったりと湯船に浸かりながら
思い浮かべる。

どのバルーンもゆるやかに飛んでは
青い天井に頭をぶつけて止まる。

もっと高くに飛んでいけるだろうそれらを
一旦そのままにしておいて思いつくだけ
たくさん浮かべる。

天井が埋まりそうになったとき
中でも一番遠くに飛びたそうなバルーンの
紐を手に握って、もっともっと大きく
膨らませる。

昔話だったり、未来の話だったり、
宇宙人の話だったり思いつくままに
詰め込んで息を吹く。

(家に誰もいない日だけしか
できないこれ。)

体を洗って髪も洗って、
全身綺麗にしたらそろそろバルーンとも
お別れの時間。
ため息一つでたくさんあったバルーンたちは
潔く弾け飛ぶ。

一つだけ手元に残したこれを
お風呂の外まで持っていく。

潰さないように、
そっと歩いて、
タオルで体を拭く。

パジャマを着て髪をまとめたら
そこからそっと、部屋へ戻る。

…着いた。
パソコンの前の椅子に座る。
スイッチはONのまま
スリープを解除して、空へアクセス。
必要事項を打ち込む。
…これで最後の風船ともお別れ。

手から、紐を放す。
バルーンは、それの速さで
ふわりと
空へ浮かんでいく。

どんどん、どんどん
遠くへと。

愛着の静かな感触はその内
誰かのための雨になって、
種になって、どこかの土の上に
落ちるだろう。

花なら
誰かが咲かせてくれる。

そんなのでいい。

雨にも種にもなる前に
ため息と一緒に飲み込まれて
しまうよりは。


いってらっしゃい。

見えない循環の中、
君たちが咲き誇れるような
楽しい旅路がありますように。
どこまでも伸びていく枝の様に
きっとどこまでも続いていくことだろう。

言祝ぎを紡ぐよ。