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ある週末サーファーの記録047 サンミゲル 1

 一時期、モザンビークで知り合ったサーフィン仲間の辻と頻繁に海外トリップに出かけていた時期があった。この頃は両者の休みのタイミングとサーフィン熱がたまたま合ったのだろう。

 2014年の春頃、このときの目的地はメキシコ、バハ・カリフォルニア半島の北部だった。その数年前に新婚旅行で半島最南端から入って伝説的なサーフポイント、スコーピオンベイにトリップしており、いつかバハ・カリフォルニアの北部も訪れてみたいと思っていた。

 北バハといってもどの辺りを目指して行ったら良いのか、具体的なイメージはなかった。ただ、半島の太平洋岸を辿ればそこら中に無人の良い波が割れているものだと漠然と思っていた。とりあえずネットの情報を頼りにレンタカーで波を探すという方針のみで辻と旅行することにした。一人旅だともう少し慎重に下調べをするが、二人の場合は大胆というか杜撰になる。

 しかし、日本から北バハに行こうにもちょうど良いフライトがなかった。少し考えて、アメリカのサンディエゴまで飛んで陸路で国境を越えることにした。サンディエゴからメキシコ国境までは約30kmだ。これも軽い考えでサンディエゴ行きのフライトを手配した。

 サンディエゴ空港に着いた私たちは、ターミナルを出てすぐに捕まえたタクシーにサーフボード2枚を突っ込んで国境へ向かった。タクシー運転手は何のためらいもなく出発したので、空港から国境に向かう旅行客はめずらしくないのかもしれないと思った。

 ほどなくして国境に到着。徒歩で越境する列に加わりベルトコンベアに乗せられた製品のようにゲートに流れて行く。サーフボードを持っているのは私たちのみ。周りの多くはメキシコ人と思しき人々で意外に軽装が多い。この辺りでは国を越えるという行為が日常的なものなのかもしれない。四方を海に囲まれた私たち日本人にはあまり馴染みのない感覚だ。

 国境はまさに国の玄関である。国境の雰囲気を見ればその国そのものの様子が垣間見える気がする。陸路の場合はその隣の国との関係も覗けるところが興味深い。アメリカは入って来るものにはシビアだが、出て行くものには無頓着だ。私たちはアメリカを出国したのか認識する前にメキシコ側のカウンターに着いていた。メキシコの国境の職員にスペイン語で挨拶してパスポートを出すと、にこやかに入国スタンプを押してくれた。

 すんなりメキシコに入国。土産売りたちの呼びかけを笑顔でいなしながら「Taxi?」と彼らに聞くと「あっちにいるよ」と指差しで教えてくれた。私の経験上こうするとほとんどの国でタクシーを捕まえる場所がわかる。例外は10年ほど前に行った中国の地方都市で、どんな発音でも「Taxi」が伝わらず往生したことがあった。

 メキシコ側国境のタクシーにもサーフボードを突っ込んでレンタカーの営業所に直行。間も無く、北バハトリップのスタート地点に到着した。

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