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陸別に行った
1月30日、私は北海道の陸別町にいた。「日本で1番寒い町」を楽しみに北見から1時間30分かけてやってきたのである。しかしながら道の駅のデジタル温度計に示されていたのは「マイナス1℃」の文字。正直ぬるい。私が求めていたのはマイナス20℃の過酷な環境だったからだ。
陸別町には宿泊施設が少ない。なので訪問者が宿泊する場合、道の駅か民宿の二択を迫られることになる。私は適度な孤独感が好きな事もあり道の駅を当日の宿に決めていた。道の駅は元鉄道駅でもある。私の好みでもある。料金は一泊二食付きで8300円、結果的に満足な内容だった。
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18時頃に夕食を食べた。食事は基本的に食堂のような広間で行うのだが、宿泊者は工場関係者と思われる人が多かった。少なくとも彼らの雰囲気は旅行者の纏うそれではない。実は宿泊予約が取れなくて私は予定を一日後ろにずらしていたのだが、そんな断続的に工事が行われているのだろうか?
夕食後も特にやることがないので町営浴場へと出かけた。時刻は20時過ぎ、通行人は誰もいない。気温はマイナス4℃。陸別にしては暖かいが、寒さは十分に強く私の肌を刺してくる。町営浴場へは約10分の道のりだった。雪で転ばないように慎重に歩いていく。
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国道を離れると聞こえるのは自分の雪を踏む音だけである。雪国の家は防音性も高いのか、生活音もほとんど聞こえない。だけど町には生活の気配が確かに、そして静かに満ちていてた。この町はちゃんと生きている。
町営浴場に併設された体育館では女の子3人がダンスの練習をしていた。地方で若年層を見かけると嬉しくなる。きっと彼女たちは陸別町を一度は出て行くのだろう。でもこの町のことは忘れないで欲しいな、と余所者ながら勝手に思った。
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町営浴場からの帰り、セイコーマートに寄った。このセコマ、何故かグーグルレビューが異様に低い。私も戦々恐々と入店したが結局何も起きなかった。レジの女性は確かにテンション低かったが、それが原因なのだろうか?
翌日は午前10時のバスで帯広へ向かうことに決めていた。だが午前7時頃には目覚めていたので、朝食後、やはり暇になった。地理を好む者として、このような時は歩くに限る。
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町を囲む山の裾野に神社があった。経験上、町を見下ろせる場所に神社は多い。階段にも雪は積もっておりこれまた慎重に登る。上からは木々に遮られながらも町が一望できた。改めて見ても小さい町であった。でもそこには約2000人の暮らしがあり、それぞれの思いと歴史が詰まっている。それらが積み重ねられたのが自分が今見ている風景なのだ。
去り際におみくじを引いた。大吉だった。どうやら陸別の神は私に対して好意的らしい。本当は寒さだけを目的に来たのに。そんな私にも優しくしてくれるなんて優しくて懐の広い神様である。もう一回ぐらい来てもいいかもしれない。陸別町は良い町だったから。
ps.難産でした。紀行文は難しいです