見出し画像

かえろう

ああ、夕暮れ5時

ムばーと濃厚にあふれ出すだいだいが辺りを染める。

サヨナラを告げるように、酸味の効いただいだいが最後の力を振り絞ってわめき出す。

それでも、僕は悲しまない。

それでも、僕はたそがれない。

そっと、けれども自信をこめて右の手のひらを胸元まで上げるんだ。

僕が、ここにいるために。僕が、ここでほほえむために。


待たせて ごめん


僕は申し訳なさそうでいて、それ以上に恥じらいをこめながらつぶやくように言葉を漏らした。

ここまでかえってくるのに本当に多くの時が流れ去り、メタボリックな感情が僕の足を重くしていた。

だから、僕は恥ずかしくてわずかにだけど言葉を振るわせていたんだ。

けれども、そっと、僕の手がぬくもりにつつまれる。


黄昏がそれを悔しそうにしながら見送った。


そして、夜が訪れる。

けれども、僕らの間にはまばゆいばかりの朝が訪れるのだ。

本能が二人を朝にする。

おはよう、世界。

画像1


いいなと思ったら応援しよう!