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自作小説レビュー&帯をつけてみる

 こんにちは。黒崎江治です。朝晩はすっかり寒くなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 つい先日、新作小説をKindleで発売し、Twitter(自称X)広告も打っていますが、いまひとつ伸びが悪いので自分でもっと宣伝することにしました。

プロモ広告についてはこちら。

 というわけで自分の作品に自分で短いレビューを書いてみます。それだけだとあんまり芸がないので、出版社から出ている(あるいはそれを模している)小説っぽく、帯を付けてみたら印象がどうなるかな、というのもやってみます。「感動のラストに涙が止まらない」(クソデカ文字)みたいなやつですね。あれって作者はどういう気持ちになるんだろうか。

 新しい作品から順にみっつやっていきましょう。レビューや帯で面白そうだなと思ったら読んでみてください。

『伊勢佐木マスカレイドスクウェア』

 2038年の横浜、伊勢佐木町。犯罪者の制圧を生業とする沖田とヒバナは、人々を暴力に駆り立てる〈白い羊〉が同業者の死に関わっていることを知る。しかし銃とチェンソーで切り開いた道の先は、悪意と毒がわだかまる窮地だった。ふたりは伊勢佐木町きってのアドレナリン中毒者に命を握られ、無謀な任務を強いられる。その一方で考えることに飽いた人々は、陰謀と暴力のスクウェアで狂おしく踊り――

あらすじ

【レビュー】 
 舞台は渋谷でも新宿でもみなとみらいでもない。遠く不確かな未来でもない。この物語は、いまからせいぜい15年後の伊勢佐木町で繰り広げられる。2020年の感染症流行から分岐したこの世界では、我々が生きている現実世界と同種の空気が、よりシビアな形で蔓延っている。閉塞、絶望、無関心、自己中心主義。物語に登場するトランキルやヴォルトリギンといったアイテムは、まさしくその象徴だ。しかし登場人物たちは必ずしもそれを否定せず、己の一部として取り込んでいる。 いまから15年前にこれが読まれたならば、やけに厭世的だと評価されるかもしれない。もしも15年後に読まれたならば、当たり前で陳腐だと評価されるかもしれない。だからあなたはいまこれを読むべきだ。少なくともいまの世界に不満足なら、読む価値はある。もっとも、それはどんな物語にも言えることかもしれないが……

 うーんこれは★★★★★評価。帯はこんな感じだろうか。


『アブーバースの妖石術師』

 聖なる大河の流域と漠たる荒地にまたがる大国アル・ベゥーラ。放浪の魔術師ザハリヤールは、久方ぶりに帰って来た街で逃亡奴隷の少女を助け、彼女の身に宿る秘密とともに、ふたたび旅の身となった。異形に脅かされる町、権威に翻弄される都市、素朴な遊牧民の集落、放蕩な教主の宮殿。ザハリヤールは石の魔術で人々に力を貸すが、やがて己の過去とも対峙せざるをえなくなる。

あらすじ

【レビュー】
 ヨーロッパ風のファンタジーに比べると、アラビア風のファンタジーは少ない。参考にすべき作品が少ないからか、あるいは文化的にあまり馴染みがないからか。しかし馴染みのない要素に触れることは、ファンタジーの大きな楽しみのひとつだ。この物語で描かれる風景が、においが、人々が、教えが、あなたをひと味違ったファンタジーの世界に引き込むだろう。もちろん魔法もある。ひとつひとつに物語を宿した石が主人公の力の源泉だ。
 作品の語り口はやや特異な感じがする。これは物語がペンによって記されたのでなく、暗紅色のフードを被った女性(あくまでも想像だが)に語られていることを示している。そこは夜の闇に囲まれた焚火の傍だろうか。甘いにおいが漂う寝室だろうか。あなたの想像力が豊かなら、きっとこの物語を気に入るはずだ。

 帯はこんな感じ。この作品には似合わないかもしれない。


『蒸気機関車に竜を乗せて』

 産業革命を経て蒸気機関車が走るようになった王国。取材旅行で田舎の漁村を訪れた若きジャックラインは、そこで双子の竜と出会う。四百年ぶりに目覚めた二匹には、かつてジャッキーという大切な友人がいた。遠い昔に別れた彼の足跡を辿るため、ジャックラインと竜たちは蒸気機関に乗り、風変りな旅をはじめる。四百年の長きに渡って秘されてきた、歴史の真実へと至る旅を。

あらすじ

【レビュー】
 ヴィクトリア朝イングランド風の世界で繰り広げられるこの物語は、ピーター・ポール&マリーの『パフ(Puff the Magic Dragon)』を強く意識している。というより、半ば後日談のようになっている。元ネタと同様、「大人になることの寂しさ」が、この作品にもほんのり漂っている。しかし、これは悲しい話ではない。少なくとも、ある種の温かさや心強さを与えてくれる。作家のブライアン・オールディスは「子供らしさが死んだとき、その死体を大人と呼ぶ」と言ったが、この物語のラストは、違うメッセージを伝えている。「子供らしさは死んだのではなくて、その人の心の奥でまだ生きている。たまにそれを見つめたり、手を握ったり、抱きしめたりするのは素敵なことだ」。もちろん、単なる冒険ファンタジーとして楽しむこともできる。
 雨の日の窓辺で、コーヒーを片手に読むのもいいだろう。子供のころに戻ったつもりで、歯を磨いたあと毛布にくるまって読むのもいいだろう。一番素敵なのは子供のころに読み、大人になってから読み返すことだが、一度も読まないよりは、一度だけでも読んだ方がずっといい。

 レビューはしんみりだけど帯はどうしてもドーンという感じになる。


 というわけで三作やってみました。個人的には最後のやつが一番いいんじゃないかと思います。改めて作品へのリンクを貼っておくので、みなさまの素敵なレビューお待ちしています。ペーパーバックもあるよ。


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