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恋の始まりはいつもそばに(矢久保美緒_1話完結)

春の風が心地よく吹き抜ける大学のキャンパス。新生活が始まって数週間が経ち、矢久保美緒は少しずつ環境に慣れてきたが、人見知りの性格もあってまだ周りと打ち解けるのが難しかった。ゼミでは、そんな彼女がひとりでいることが多かった。

ある日、ゼミの講義が終わり、教室を出ようとしていたとき、同じゼミでグループワークをしていた。柴田〇〇がふと美緒のリュックに目を留めた。

〇〇「これ、遠藤さくらちゃんのキーホルダー…?」

〇〇から思いがけず声をかけられたことに驚き、美緒は少し戸惑いながらで少し顔を赤らめた。

美緒「…うん、そうだよ。〇〇くんも、さくちゃん推しなの?」

〇〇はにっこりと笑いながら頷いた。

〇〇「そうなんだ!まさか同じゼミでさくちゃん推しがいるなんて、びっくりだね!」

彼の反応に美緒は少し緊張しながらも、心の中で少し嬉しさを感じていた。お互いに共通の趣味を持っていることがわかり、自然と会話が弾んだ。

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それからしばらくして、〇〇と美緒は乃木坂46の握手会に一緒に行くことになった。二人とも、これまで何度も握手会に通っていた常連だったが、いつもは一人で参加していた。

オタク仲間がいなかったからこそ、今回一緒に行くという新しい経験に二人は少し照れくささを感じていた。

〇〇「いつも一人で来てたから、こうして誰かと一緒に並ぶのって、なんだか新鮮で、少し不思議な感じがする。」

〇〇が照れくさそうに話しかけると、美緒は頷きながら、少し照れたように微笑んだ。

美緒「うん、わかる。私もいつも一人だと、さくちゃんに何話そうって考えすぎて、すごく緊張しちゃうんだけど、今日は〇〇くんが隣にいてくれるから、なんだかリラックスできてる気がする。」

そう言いながら、彼女は少しほっとした表情を浮かべた。二人は一緒に笑い合いながら、推しメンとの会話を心待ちにしていた。

しかし、順番が近づくにつれて、二人とも少しずつ緊張が高まってきた。握手券を手にしたまま、静かに列が進むのを待っていると、周りのファンたちもそわそわとした様子で、自分の番を待っていた。

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ついに二人の番が来た。〇〇が先に進み、遠藤さくらの前に立つ。さくちゃんは彼の顔を見て、すぐに笑顔を浮かべた。

さくら「あ、〇〇くん!今日も来てくれてありがとう!」

〇〇「さくちゃん、いつも応援してます!今日は友達と一緒に来たんだ!」

さくら「うん、知ってるよ!美緒ちゃんも常連さんだもんね。」

さくちゃんは〇〇の後ろにいる美緒を見ながら優しく微笑んだ。〇〇は握手を終え、次に美緒の順番になった。

さくら「美緒ちゃんも、いつもありがとうね。今日は連番カップルさん?いい彼氏さんだね。」

その一言に、美緒は驚きと恥ずかしさで顔を真っ赤にし、慌てて手を振った。

美緒「い、いえ!違います…友達です!」

美緒の焦る姿に、さくらはくすっと笑いながら優しく彼女の手を握り返した。

さくら「そうなんだ。でも、二人とも仲良しでいいね。これからも応援よろしくね!」

美緒は顔を赤くしながら「ありがとう…」と小さく呟き、握手を終えた。

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握手会が終わり、二人は会場を後にして帰り道を歩いていた。美緒はまだ顔を赤らめていて、さくちゃんの「いい彼氏さん」という言葉を思い出してはモジモジしていた。

美緒「さくちゃん、なんであんなこと言ったんだろう…」

美緒が恥ずかしそうに呟くと、〇〇は照れくさそうに笑いながら答えた。

〇〇「たぶん、俺たちが仲良く話してたから、カップルっぽく見えたんじゃないかな。」

その言葉に、美緒はさらに顔を赤くして、少し俯いた。

美緒「そうかな…でも、カップルだなんて思われるなんて…ちょっと恥ずかしいな。」

二人はしばらく無言で歩いていたが、〇〇は意を決して美緒に向き直った。握手会で1日彼女と過ごす中で、改めて彼女が可愛く感じられ、今の気持ちを伝えるべきだと思った。

〇〇「美緒ちゃん、実はずっと言いたかったことがあるんだ。」

美緒は驚いて顔を上げ、〇〇を見つめた。

美緒「何…?」

〇〇「今日一日一緒に過ごして、改めて美緒ちゃんの可愛さに気づいたんだ。ずっとそばで見ていて、気がついたら美緒ちゃんのことが好きになってた。だから…俺と付き合ってほしい。」

その言葉に、美緒は一瞬動きを止めた。驚きとともに、心が温かくなり、頬がさらに赤く染まった。

美緒「そんなこと…私、可愛くなんてないけど…でも、〇〇くんがそう思ってくれるなら…私も、〇〇くんのことがずっと好きだったから…嬉しい。」

美緒は恥ずかしそうに、でもしっかりと気持ちを伝えた。〇〇は彼女の手を優しく取って微笑んだ。

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それから二人は付き合い始め、さらに親密な関係になった。お家デートでは、美緒が〇〇に甘える姿を見せるようになり、時折赤ちゃんのように甘えてくることも増えていった。

ある日、映画を見ながら美緒はそっと〇〇に寄り添い、膝の上に座って甘えるようにくっついてきた。

美緒「ねえ、〇〇くん、今日はもっとくっついてもいい…?」

甘えた声に、〇〇は微笑みながら彼女の頭を優しく撫でた。

〇〇「もちろんだよ、甘えん坊さん。」

ふと、〇〇は最近の美緒の変化に気づいた。少し大人びた服装やメイク、ほのかに香る香水。彼女が少しずつ大人っぽくなっていることに自然と目が向いた。

〇〇「美緒ちゃん、なんか最近大人っぽくなったよね。服装も、香りもすごく好きだよ。」

〇〇がそう言うと、美緒は驚いたように顔を赤らめ、照れながら小さな声で答えた。

美緒「…〇〇くんに、もっと可愛く見られたくて…頑張ってるんだ。」

その一途な気持ちに、〇〇は胸が温かくなり、彼女をそっと抱き寄せた。

〇〇「美緒ちゃんはそのままでも十分可愛いけど、そうやって努力してるくれるところも含めて大好きだよ。美緒ちゃんが彼女になってくれて、俺すごく幸せだ。」

〇〇の言葉に、美緒はほっとしたように微笑み、そっと彼の肩に寄り添った。彼女の温もりを感じながら、〇〇は優しく彼女の背中に手を回した。

静かな時間が二人を包み込み、甘く穏やかな幸福感が広がっていった。そこには、二人の心がゆっくりと一つになっていくような、そんな温かな時間が流れていた。




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