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先輩のこと、好きになってもいいですか?(一ノ瀬美空_後編)

↓前編はこちらからどうぞ。

デート当日、〇〇は待ち合わせ場所で緊張しながら美空を待っていた。

美空「〇〇くん、待った?」

待ち合わせ場所に現れた美空は、普段にも増して可愛いかった。〇〇がいつも見ている制服姿とは違い、フェミニンな服を着ていて、髪も普段より丁寧にセットされている。まるで彼女もデートを楽しみにしていたかのような装いだった。

〇〇「先輩、その服、すごく似合ってます。」

〇〇はつい口を滑らせてしまったが、それは本音だった。彼女のその姿に、心臓がドキドキと音を立てる。

美空「え、ありがとう。〇〇くんも、すごく大人っぽくなったね。カッコいいよ。」

美空もまた、彼の変化に内心驚いていた。普段の可愛い後輩とは違い、どこか男らしい雰囲気を漂わせている彼に、胸が高鳴るのを感じた。しかし、先輩としてのプライドもあり、表には出さないよう努めた。

二人は、〇〇の姉・史緒里から教えてもらった地元のデートスポットへ向かうことにした。少し照れくさい気持ちを抱えながらも、二人は自然と歩調を合わせ、距離が近づいていった。

〇〇「美空先輩、手を繋いでもいいですか?」

〇〇が勇気を出して言うと、美空は一瞬驚いたが、すぐに頷いた。

美空「…うん。」

二人は手を繋ぎ、何とも言えない心地よい緊張感の中で歩き始めた。

デートも中盤を過ぎた頃、二人は観光スポットを巡りながら、ゆっくりと歩いていた。美空は、普段とは違うおしゃれな靴を履いていたため、少し足元が不安定そうだったが、何も言わずに笑顔を浮かべていた。

美空「〇〇くん、今日は本当にありがとう。こんな素敵な場所に連れてきてくれて…」

そう言いながら、美空はふとバランスを崩した。慣れない靴のせいで足を取られ、反射的に前に倒れそうになる。驚いた彼女は、とっさに「きゃっ!」と声を上げながら、咄嗟に〇〇の腕を掴んだ。

美空「ごめんね、私、靴が…」

彼女は恥ずかしそうに震えた声で謝り、顔を赤らめながら〇〇を見上げた。

〇〇の腕の中で、美空の柔らかな感触と、ふわりと漂うシャンプーの香りが彼を包み込み、頭が真っ白になる。

〇〇「い、いえ、大丈夫です!こ、こういう時こそ頼ってください!」

〇〇は動揺しながらも、慌てて美空を支え直す。しかし、彼女がまだしがみついている状況で、その距離感に耐えきれず、顔がますます赤くなるのが自分でもわかった。

美空も、自分が〇〇に抱きついていることに気づき、徐々に顔が赤く染まっていった。

美空「…ごめん、恥ずかしいね、こんな…」

彼女はしどろもどろになりながらも、ふと顔を上げた。二人の顔が、あと少しで触れそうなほど近く、互いに目が合った瞬間、時間が止まったかのように感じた。

お互いの呼吸が、はっきりと感じられるほどの距離。〇〇は、美空の大きな瞳がこちらを見つめていることに、さらに鼓動が速くなるのを感じた。そして、言葉が詰まり、何も言えなくなってしまった。

美空も同じく言葉を失い、少しの間、二人は無言のまま、ただ互いの存在を意識して固まっていた。

ようやく美空が体勢を整え、少し離れると、彼女は再び照れくさそうに微笑んだ。

美空「…ほんと、ごめんね、〇〇くん。私、ったらドジだな。」

〇〇「い、いや、そんなことないです!美空先輩、可愛かったですよ!」

〇〇は思わず口に出してしまったが、言った瞬間に自分の顔がさらに熱くなるのを感じた。美空も驚いた顔をしながら、少し目をそらし、さらに頬を赤く染めた。

美空「…ありがとう。」

その後、デートは和やかに続き、無事に終わったが、二人の間には微妙な緊張感が残ったままだった。帰り道、〇〇は美空に声をかけるタイミングをうかがいながら、何度も心の中で言葉を練習していた。

そして、ついに意を決して、美空に向き直った。

〇〇「先輩、あの…俺、ずっと言いたかったことがあるんです。」

〇〇の真剣な表情に、美空も立ち止まった。そして、彼の言葉を待ちながら、少しだけ期待するような眼差しを向けた。

〇〇「美空先輩、俺…ずっと前から先輩のことが好きでした。」

美空は驚きながらも、すぐに微笑みを浮かべた。

美空「私も、小川くんのことが好きだよ。実は、モールで〇〇君が他の女の子と歩いているのを見かけたことがあるんだ。その時、胸がすごく苦しくなって、自分がどれだけ小川くんのことを大事に思ってたか気づいたの。」

その言葉に、〇〇は胸がいっぱいになった。

_________

デートの帰り道、美空が〇〇に腕を絡め、甘えるような仕草を見せた。

美空「〇〇くん、これからは美空だけのことを見ててね。浮気なんて、絶対許さないから。」

美空はいたずらっぽく微笑むと、ふいに〇〇のほっぺに軽くキスをした。その瞬間、〇〇の頭の中は真っ白になった。彼女の柔らかい唇が触れた感覚が、まだそこに残っているような気がして、心臓はドクドクと激しく鳴り続けている。

〇〇「せ、先輩…」

美空「何?顔、真っ赤だよ?もしかして、キスするの初めてだった?」

美空は、少し意地悪そうに笑っている。

〇〇「……そ、そんなことないですよ!」

そう言い返したかったが、声は震え、動揺を隠せなかった。

美空「これでもっと美空の虜になってね。〇〇君、大好きだよ♡」

美空はふわりと笑いながら、〇〇の腕にしっかりと絡めてきた。〇〇はドキドキしながらも、そんな彼女の態度が嬉しくて仕方がなかった。

〇〇「浮気なんて絶対しませんよ、俺には美空先輩だけですから。」

美空「嬉しい♪じゃあ、約束ね。今度は、もっと私をドキドキさせてね。彼氏くん♪」

その言葉に、〇〇の心臓はまた一段と激しく鼓動を打ち、顔がさらに熱くなるのを感じたが、彼はその感情を隠すことなく、美空に向かって微笑んだ。二人の距離は、これ以上ないほど近づき、夕焼けに染まる空の下で、二人は寄り添いながら歩き続けた。

新しい関係が始まったばかりの二人には、これからもたくさんのドキドキが待っている。夕陽がゆっくりと沈む中、彼らの世界は少しずつ色づき、温かな風が二人を優しく包んでいた。




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