<縁は異なもの粋なもの?>Don’t think! Feel JAZZ! 第四回 「〜幸せのリス〜」
※黒田ナオコ過去コラム公開 2017年10月号のひろたりあん新聞掲載
空気が違う。澄んだ高い空を見上げると、秋の気配だ。
ここは日本ではない。
米ニューイングランド地方に旅をするなら、だんぜん秋だ。そのくらい気持ち良い。景色がすべて秋色。ここの紅葉は日本よりダイナミックで広大だ。
ニューイングランド地方とは、メイン州、マサチューセッツ州含む米東部の六州のこと。その中心都市が、アメリカ独立の舞台の古都ボストンだ。レンガ色の街並みに大ぶりの枯葉が色映える。
ボストンに来て数か月。慣れてきたものの、ひと通りの観光を終えたら、とてつもなく暇になった。家事と買い物以外は散歩する程度。公園で絵を描いたり図書館に行ったり。しかし、なかなか一日が終わらないことと、話す人が少ないことにストレスを感じた。
やはり、音大に、行こう。
渡米してから、ジャズの音楽大学への入学を決めた。
まず、TOEFLのスコアを取るために勉強し、ジャズ理論を習った。目指すバークリー音大の教授陣は、大学の仕事以外にも個人的なレッスンを学内でおこなっていたので、私はまだ学生ではなかったが、音大でレッスンを受け、学生たちとセッションもした。
入学のための論文を書き、必要な書類を揃えていった。入学許可が下りればビザも変更し、予防接種を打ち直し、日本での大学で取得した単位を移行する手続きを取った。
順調に進んだように聞こえるが、慣れないアメリカ生活からの不調も出ていた。食欲も落ちて、痩せた。
しかし日本へは帰れない。いや帰れないことはないが、インターネットがあまり普及しておらず、気軽に友人と連絡もとれない。とんでもなく遠くにやって来た感じがしていた。
そんな中、癒しの光景は、公園や木々に居る、リスたちだった。ボストンには野生のリスが多い。たまに部屋の窓からも、木の上を走っている姿が見えた。そんな光景を見た日はラッキーな気がして、「幸せのリスが来た♪」と心はずんだ。
ボストンは、札幌と同じくらいの緯度。冬は雪の日が続き、氷点下になる。冬支度までのひとときに、可愛い小動物を見ることが出来る。
しかし、ある時、やたらとリスが多いことに気付く。ちょっと多すぎるのではないか。
あとで分かったのだが、もともとはペットであったリスを、自治体がわざわざ野生化させて、このようになったらしい。NYの公園などでも見ることができるが、「リスを増やして癒されよう運動」のようなものが一時、流行ったようだ。
在ボストンの日本人友人が、
「最初はリス可愛い!って思っていたけど、だんだん、カラスに見えてきました…。」と言っていた。
たしかに…。
ゴミ箱をあさっている姿などをみると、嫌な感じもする。スナック菓子なども、油断していたら取られてしまう。しかしリスは姿かたちが可愛い分、許されてしまう。
カラスには悪いが、見た目って大事だな…。
そんな可愛いリスに、随分と癒された秋だった。
そして、ようやく晴れて、28歳で、アメリカの音大生になった私であった。