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【魔法みたいな解決策に飛びついてしまう罠 RICビジネス編#10】

よくわからないけど、この最新のツールでみんな上手くいっているようだ。

自分だけ使わずにいたら取り残されるんじゃないか・・。

取り残される恐怖がじわじわ胸のうちに広がる。

思い切ってメディアの注目も集まる最先端の仕組みやツール、サービスを導入すれば、うちも上手くいくんじゃないか。

経営者であれば、一度はこういう誘惑に晒され負けたことがあるかもしれません。

目的や本質的に取り組むべき課題をぼやかしたまま、「魔法」のようだともてはやされる手法に魅せられ、気づけば大きく横道へ逸れている。

私もこの罠に陥った時がありました。

というわけで、今回紹介する直面した壁は目移りする壁です。


<ミドルステージ期に当たる私の会社>

上の図は、スタートアップのステージ別の課題を表した図で、あくまで目安です。

前回、前々回とミドルステージ期の話をしたので、簡単にお伝えしようと思います。

アーリーステージを経て、一定の資金投下と事業成長の方程式が確立。事業をスケールさせるための最も効果的なお金の投下先もわかっているのがこの時期です。

この時期に大事なのは、競争相手との間に堀(MOAT)を築くことです。MOAT(モート)とは、かんたんにはマネできない競争に優位な状態を作り上げることです。

私の会社では、競争優位の源泉となるRICという独自のサービスができており、社員が130名ほど、売上が7、8億円くらいになっていました。

大所帯になってきたので、だんだん目が届かないところも出てきます。社長や部長クラスがいなくても、ある程度一人一人が判断して動ける仕組みが必要でした。

そこで、会長の私が新社長と共に取り組んだのは、それぞれの役職の独自に使える予算を決めたり、予実管理の仕組みを整えたり、KPIマネジメントをしたりといったことでした。

結果、私はRICという課題解決の思考法を研究・開発プログラムする新しい会社を設立しました。

※この10話からは、私の保育の会社ではなく、新たに創設したRICの会社の話になるので、図のステージ別の内容と会社の事例はリンクしていません。

<「最先端」のサービスに飛びついてしまう>

元の会社の体制を整え、新社長に事業承継をし、新しい会社を設立した頃。

RICの話を聞き、考えに共感してくださった方々からこんな話をされました。

「仲間集めのためにも、知ってもらうためにも出版をしてみたら?」
「最近はクラウドファンディングって仕組みもあるよ」

話を受け、私は「そんな面白いサービスがあるのね」「出版ってカッコいいな」など、浮き足だった気持ちもありつつ、出版のためのクラウドファンディングに挑んだのでした。

結果、出版自体には満足していますし、クラファンも成功に終わるのですが、挑んだこと自体には開始してすぐに後悔することになってしまいます・・。

今思えば、目移りする壁にぶち当たっていました。

<本当にやるべきことは地味だったりする>

目移りしたとは、どういうことか。

私の中で、RICとは何かということがまだ深め切れていなかったのです。本当は、当時繋がりのあった大学教授の方とRICを理論化・プログラム化することに専念すべきでした。

それなのに、新しい技術を試したり、著名な人とのコラボで注目を浴びることに惹かれ、釣られてしまったのです。目的を見失っていました。

新しい技術やサービス、経営理論がメディアでも大々的に取り上げられたりします。そうすると、周りがみんなそれらを取り入れて先へ進んでいるような気がして焦ってしまう。

AIを取り入れて何かしないと…
DX化を進めないと…
パーパス経営にしないと…

しかし、これらはあくまで目的達成の手段です。

このような現状を変えるには、秩序立てて行動する力が必要です。

具体的には、次の2つで構成されます。

①言語化:自分の中にある「こういうことをやりたい」「こうありたい」というイメージを言語化して可視化する。浮かんでいる選択肢をすべてテーブルに乗せ分類する(秩序化)。

②コミットする:言葉にして、自分軸をはっきりさせたら行動に移す。

なんのためにやるのか(ミッション)、ありたい姿(ビジョン)、ミッションビジョンにつながるやりたいこと、やらねばならぬこと(目標)を言語化し、計画を立て、チャレンジしてみることです。

<惑わされないことで得たもの>

なぜ、言語化とコミットが大事なのか。

経営をしていると、いろんな話が舞い込んできます。

あれも面白そう、これも気になる。こんなやり方もある。これができたらもっと有名になれるかも。あそこと提携できるかもしれない…と頭の中がカオス状態になりがちです。

それを構造化し、自分の中で整理しなければ、自分で決定しているようでいて実はただ囁き声に惑わされているだけになってしまいます。

何のためにやるんだったか目的を思い出し、今最もやるべきことは何かと優先順位をつける。

それによって、自分の物差しに沿って行動できるようになることが理想です。

私の場合は、クラファンの最中から反省して、後に同志社大学や京都大学と産学連携でRICの研究を進めるRIC総合研究所を創設し、特許を取得することになりました。

おかげでRICとは何かを確立でき、自信を持ってサービスを勧めることができるようになっています。

<まとめ>

経営の道は、霧の中で車を運転するようなもの。

先が見えないからこそ、常に周りがどんな手法で上手くやっているのかが気になりますよね。最先端のものに飛びつきたくもなってしまいます。

ですが、大事なのはあくまで目的を見失わないこと。

どこを目指すのか、なぜそうするのか、何ができるのかを言語化して整理し、秩序立てて行動していく必要があります。


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