ESGは大企業のためのものか
ESG投資では指数への選定等上場企業、特に大企業の取組に注目が集まりますが、取組の効果という視点では未上場企業を含む中堅以下の企業の方が重要です。もちろん新規に取組を始めるということもそうですが、既存の取組をESG要因と結びつけ企業価値創造のストーリーを補強することで投資家を魅了できるためです。
前職では未上場企業ファンドの投資家の依頼で、投資先である北欧の未上場企業のESG調査を担当したことがあります。その未上場企業は主に再生可能エネルギー関連の企業で、取り扱っている製品・サービスは申し分のないものでしたが、投資家は当該企業のリスクマネジメント能力の測定も兼ねて、ESG調査を依頼してきたのでした。未上場企業は上場企業と比較して情報開示の水準が低いのが一般的ですが、取組が無いとは限りません。実際、それぞれの未上場企業と直接コミュニケーションを取ると、環境や品質に関する方針を持っている企業は少なくありませんでした。しかしノルウェー語等母国語でしか存在していなかったため、投資家にも存在を認知されていなかったのです。一方、調査を通じてESG要因を理解した未上場企業は、出資者である投資家の期待に応えようと取組の拡充をコミットしていました。
一方、最近は取材で伝統的な大企業だけでなく、上場から日が浅い企業への訪問も増えています。その中には本業が社会的課題解決に明確に寄与し、副業やテレワークを当然のように容認している企業もありますが、ウェブサイト等公開情報では詳細な情報が確認できないこともよくあります。このような企業には先述の未上場企業に対するものと同様、本業に支障をきたさない程度に開示情報充実を推奨しています。特に株主構成が創業者等に偏っている状態から、広く投資家を求めていくフェーズに移行するには先述のようにESG要因に関心の高い長期投資家を引き付けることが得策だと言えるためです。