たかが瓶。されど瓶。
この瓶には先週プリンが入っていた。
そのプリンというのは家から1時間ほど離れたところにある、すこし値の張るお菓子屋さんのプリンだ。
そもそもは、友人がくれたものである。
来週わたしの母が入院するからと、わたしを気遣いくれたもの。
母が留守の間に家のあれこれが大変だろうからと、貰った。
そんなプリンを先週、有り難くいただいた。
勿論、母と分けていただいた。
横で飼い犬が物欲しそうにしていたので、瓶に残った分を少しだけあげた。
そんな訳で、瓶は空になった。
近頃は貯まっているからと捨てるばかりの瓶だが、これは何となく手元に置いて置きたくなった。
そうして、今ここに空の瓶があるわけだ。
この空の瓶は当たり前だが、空だから中には何も入っていない。
だけれど、お菓子屋さんのこと、友人と母と犬とわたしのこと。そんな思い出が詰まっている。
なんてことのない、空の瓶。
何だか変なことだけれども、今はわたしにとって大切なものになってしまったのだ。