見出し画像

【詩】宵烏


夜ごとに訪れる

未来への恐れと

過去からの悔恨が

朝まで私の心を揺さぶる。



救いを求めるも

信じる強さもなく

畏れを知らず

己には依存している。



何も手放せない旅烏に

漆黒の翼を羽ばたかせて

暁の空へとんでいく事はできない。




静かに輝く太陽は

翼を折り畳み

ひたすら己を抱きしめて

目をつむり妄念にふける私を

容赦なく照りつける。



烏よ。

その断崖から飛び降りよ。



絶対の恐怖が迫っても

翼を羽ばたかせようとは

しようとしまい。



己を

妄想を

それらにふけることの愉悦と

偏愛を棄てられないがゆえに。



黒い烏は

岩礁に叩きつけられる。

幾枚もの羽を散らし

ただ、死ぬ。



されど太陽は

亡骸を照らす。

肉が海で朽ち果てるまで。



そしてその時にこそ

かの者は蘇る。

自身にすら囚われず

自由に羽ばたく翼をもち




深い藍色をした

絶え間なくうねる大海を

翼をもって泳ぎ回る。



どこまでも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?