【生活】希求できるという定め
気づけば彼女の心の中は
「しなければならない」だらけで埋まっていた。
「アレをしなければならない」
でも心の中には一つも
「アレをしたい」
という「したい」という気持ちはなかったのだ。
彼女はただ無数の「しなければならない」に囲まれて
ただ流されるように生きていた。
表情は明るく取り繕って
充実感を感じてもいたけど
忙しさの間にあるふとした瞬間に
「私はなにをしたいんだろ」
という疑問に苛まされた。
何かに熱中できる人がうらやましくてたまらなかった。
私にはなにもない。
ただ義務と信じている事を黙々とこなすだけ。
働かずにすむ富や
誰からも慕われる名声もいらない。
すべてを捧げて
求めるたいと思うモノが欲しい。
でもわかっていた。
それは希望すれば心に宿る思いではないと。
生まれついた性分と
運命のめぐりあわせ。
これがすべてだった。
明日もまた何も変わらない一日が始まる。
労苦もなく、苦悩もなく、
熱意もない一日が。