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【ヒッチハイク録】#1 本土縦断1日目

動機

ヒッチハイクなるものに興味を持つようになったのは約3年前のことである。当時河合塾で浪人をしていた私がTwitterのタイムラインを眺めていると、吉田寮ヒッチレースの投稿が流れてきた。

そのアカウントの投稿を見ると見知らぬ土地に携帯と財布無しで飛ばされて、そこからヒッチハイクを駆使して京都大学の吉田寮まで帰るということをやっていると知った。とても面白そうだと思い、京都大学に合格できたら在学中にやってみようと決めた。

そしてなんとか京都大学に合格して少し経ち、ヒッチレースを今年もやっていることを把握したが、参加するか考えた時に少し冷静になって気づいた。



私はヒッチハイク未経験者であると。

未経験であるのに財布と携帯がない状態でやってみてうまくいくのかと思った。そこでその年のヒッチレースには参加せず、まずは長期休みに個人的にヒッチハイクをやってみようと思った。

しかし住んでいるのは京都、実家は名古屋であり両方とも日本の真ん中あたりに位置する。真ん中から始めても距離が伸びず面白くないと思ったのでその2か所から開始することは選択肢にはなかった。

1回生の夏休みと春休みに九州に行ったのだが両方とも旅行直後に予定があったのでヒッチハイクをすることはできなかった。

2回生になって6月半ばから7月末までの間で利尻島に滞在することが決まった。これで日本の端の方に行く用事ができたので、利尻島での滞在が終わってすぐにヒッチハイクをすることを決めた。

また宗谷岬という日本最北端の地からスタートできそうだったのでせっかくならと思って本土最南端の佐多岬を目的地に設定した。

その距離約2900kmである。

今回は関東を通るルートを選択

ヒッチハイク前は利尻島で昆布干しのアルバイトをしながら過ごしていた。その詳細は後日noteにまとめて投稿する。

利尻島を出る前に必要最低限の荷物をリュックに詰めて、残りの荷物をスーツケースに入れて実家に郵送した。またスケッチブックとマッキーを島の本屋で調達し準備を整えた。


レギュレーション

・移動手段は徒歩、他者の運転するの車のみ
・函館港→青森港or大間港のフェリーのみ例外として認める
・現金と携帯の使用に制約は無し
・スタートは宗谷岬、ゴールは佐多岬



1日目 8/1

スタート:宗谷岬

8時半に利尻島から出発し10時ごろに稚内に到着した。そのまま昆布干し同期が借りた車に乗っけてもらい宗谷岬へと向かった。到着してからオブジェの前で写真を撮ったり売店を覗いたりして解散し、12時前にいよいよヒッチハイク旅が始まった。

最初は旭川とスケッチブックにでかでかと書いて、考えていた作戦を実行してみることにした。

まずオブジェの前でうろうろして人が写真を撮るのを待ち、オブジェを撮った後に声をかけて私がその人の写真を撮ることを提案し、撮影後にヒッチハイクの交渉をしてみるというものだ。

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知らない人に声をかけるのと変な目で見られるのは慣れているので断られても何とかなるだろというメンタルでいた。

実際に声をかけてみると意外と人々の反応は悪くなかったが、私が南に行きたいのに対して東に向かう人が多かったのでなかなか乗せてもらうことはできなかった。

開始から30分程ほど経過したところで、大阪から来たという女性3人組が「名寄までなら乗せてあげる」と言ってくれた。乗れば170kmの前進である。しかし名寄でヒッチハイクをすることを考えたときに、名寄で降ろしてもらうのはよくないのではないかと考えた。

そこで先人(ヒッチハイク経験者)に意見を聞いてみることにした。

そんなものは聞いていないと思い、そっとDiscordを閉じた。

名寄市街地で降ろされてもそこから旭川まで乗せてくれる人を見つけるのは難しいと判断し、お誘いを断らせていただいた。

そこから20分近く色んな人に交渉したが、相変わらず根室や知床などの東の方に向かう人が多く、旭川のある南の方に向かう人がまるでいなかった。

ヒッチハイク初回ということもあり、このまま1日中宗谷岬で停滞するんじゃないかという不安も出始めた。

一度気持ちをリセットさせるためにその辺にあった大きめの石に腰掛けて髪を結びなおしていたところ、1組のカップルらしき男女が地面に置いていた私のスケッチブックを見ていることに気づいた。もしかしたら乗せてくれるのではないかと思い、急いで髪を結んで声をかけに行った。

話したところどうやらこれから旭川に向かうらしく、乗せるかどうかを迷っていたところだったらしい。軽トラをレンタルして荷台にすっぽり入るような箱を自分で作り、そこで車中泊をしながら北海道を周遊しているとのことだった。なので私が乗るならその荷台の箱に入るしかなかった。

ここまで聞いたあたりでとりあえず昼ご飯を食べないかと提案されて近くの飲食店に3人で入った。

海鮮丼がメインの店だったのだが昼食にしては若干単価が高くどれを食べようか迷っていたところ、特上海鮮丼と瓶ビールを勝手に注文されていた。丼ものをオーダーして少しした後に追加で焼きウニ1つとホタテのバター焼きとカニの味噌汁の人数分も注文されていた。

瓶ビール(左)と特上海鮮丼(右)
追加注文された料理たち(※運転手の方(正面)はノンアルコールビール)

食事をしながら軽くお互いのことを話し合った。2人とも東京にある同じ系列の飲食店で働いており、冬休みを取らなかった分を夏に回して北海道で新婚旅行をしているらしい。〇〇歳差の年の差婚と聞いたときはかなり驚いた。

私の略歴やなぜ北海道にいるのかなどを軽く話した後にこれからどうするかを話し合って、以下のようなルールで乗せてもらうことになった。

①乗せるのは旭川まで
②揺れによる酔いで降りたくなったら無理せず降りる
③旭川以外で下車した場合、その後のことは知らない
④極力安全運転をする

昼ごはんは奢っていただいた。昼にしてはかなりの量を食べた上、アルコールも入ったので店を出てから少し休憩してから荷台の箱の中に入って出発した。

私は荷台に乗ってからどのような体勢で過ごそうか試行錯誤した。3分ほどして普通に寝っ転がるのが一番いいと気づき、ゴロゴロし始めた。イヤホンをつけて目をつぶっているうちに眠りについた。

乗り始めてから2時間ほどで停車したのを感じて目が覚めた。寝起きでボーっとしていると箱の扉が開き、音威子府の道の駅に到着していることに気が付いた。休憩と私の生存確認を兼ねて一度停車したらしい。

売店で宗谷岬で声をかけて断られた家族連れを見かけた。「また会いましたね!」などと声をかけてみようかと思ったがやめておいた。

休憩が終わってから再出発して、箱の中で寝たりスマホをいじったりクネクネしたりを繰り返していた。旭川に近づいてきた時に、明日の移動をどうしようかと考えてもう一度先人に聞いてみることにした。

おすすめされた料理は結局どれも食べなかった

自分で考えろというメッセージを理解し、そっとDiscordを閉じた。

合計5時間の移動を経て、旭川の道の駅に到着した。車を停めて適当な居酒屋に入るつもりだったのだが事件が起きた。

道の駅のトイレに入ったときにやたらと臭いと感じたのだがすぐ出るしどうでもいいかと思った。しかし手を洗って外に出ようとしたとき、何かやわらかいものを踏んだ感覚がした。










異臭の正体は地面に転がっていた排泄物であった。










灯台下暗しとはまさにこのことであった。私だけではなく旦那さんもブツを踏んでおり、二人そろって最悪な目にあったことを確認した。

さすがに靴の裏を綺麗にしてからでないとどこにも行けないので奥さんに近くにあったスーパーで洗剤と歯ブラシを買ってきてもらい、靴を隅々まで洗った。

途中でヨボヨボのおじいさんが我々の目の前を通ったが、臭いで彼が犯人だと分かった。おそらくボケているのだろう。あれはズボンの処理も大変だろうなあと思いながら靴の掃除を終え、居酒屋を探すために徒歩で繁華街へと向かった。

ちょうどお祭りをやっていて人通りがそこそこあった。

出店をやっている通りの店はどこもやっておらず、他の通りを20分ほど歩き回っていい感じの居酒屋を見つけて入店。そこで色々料理を注文して酒を飲みながら談笑した。2人のことを色々聞いたのだが旦那さんの一人称が「王様」だったのが一番印象に残っている。

ホタテと貝の盛り合わせ

そして居酒屋で3時間ほど飲んだ後に近くにあったバーに入った。そこでスケッチブックに落書きをしてもらった。使ったスケッチブックを残すんだったら乗せてくれた人に何か書いてもらった方が見返すときに楽しいと思ったからだ。落書きをしてもらいながらお喋りを続け、3杯ほど飲んだところで店を出て解散した。

ここでイケてるマッチのつけ方を教わった

私はそのまま歩いて最寄りの快活クラブへと向かい、午前2時前に到着した。この旅がどれぐらい長引くかもわからない中で体力のある初日から金をかけるわけにもいかないと思い、個室ではなくオープンカフェで寝ることにした。シャワーを浴びて寝る準備を整え、個室用の枕を拝借してうつぶせになって眠りについた。

移動距離:247km



1日目まとめ
乗車時間:5h
移動距離:247km
台数:1台
総乗車時間:5h
総移動距離:247km
総台数:1台


2日目のリンク



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