※ネタバレ注意!「プリキュアオールスターズF」感想 文:くろきしろ
※この文章は映画.comで公開する予定だった文章です
文章量が6600字を超え、映画.comの5000字という文字数制限に抵触し、なくなくnoteに場所を変えて投稿することにしたのですが、note用に再構成する気力がなくなってしまったので大まかな構成はそのままで投稿させていただきます(結局、文字数制限がなくなったので加筆や部分的な再構成はしちゃったんですけどね笑)
なので★5段階の★評価がある前提で書かれているので、一部読みづらい箇所がございますがご容赦ください…
僕が映画.comでこの映画につけようと思っていた評価は★4.5です
それを前提に読んでいただけると多少読みやすいかもしれません
※初回の感想なので、ディティールの追いかけは最小限にして、この作品を初めて観て感じたことを中心に書いてみようと思います
【客層について】
9/17 昼の時間に鑑賞
この時間帯の劇場はほぼ満員
客層としてはお子さん連れのご家族が多かったです
ほぼほぼ女の子が観に来ていましたが、ぽつぽつと男の子も見受けられました
僕は幼いころに妹と一緒に観ていた最初のプリキュア、「ふたりはプリキュア」をきっかけにプリキュアファンになりました
ですが僕が子どもだった2004年当時は、男の子がプリキュアという女の子向け作品を観に行くことはかなりハードルの高い行為でした
男の子がプリキュアという「女の子向け」作品を観ることは「おかしい」という空気が僕の周りには間違いなくありました
なので幼い頃の僕は一度もプリキュア映画を観に行っていません
その当時と比べると、男の子でもプリキュア映画を観たっていいという空気になっているんでしょうかね?
あるいは、その時劇場にいた男の子も勇気を振り絞って劇場に足を運んだのかもしれません
「ふたりはプリキュア」の企画書に書かれていたフレーズの一つ、「女の子だって暴れたい!」は、いまやプリキュアシリーズを表現するのによく使われるフレーズとなっています
このフレーズの僕なりの解釈は、「ジェンダー規範からの脱却」ということだと考えています
つまり、「男の子かくあるべし」「女の子かくあるべし」といった、性別を理由とした「普通」や「常識」を20年もの間ぶち壊そうとし続けてきたのがプリキュアシリーズだと思っています
その結果なのかはわかりませんが、20年という時間をかけて、徐々にではありますがジェンダーに左右されることなく「プリキュアシリーズ」が子どもたちに愛されるシリーズとなってきたのかもしれない、そんなことを考えながら映画の上映を待っていました
【鑑賞前の心情】
この映画を鑑賞する前の僕は、この映画に対して期待と不安が織り交ざった気持ちを抱いていました
「プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち」以降、全プリキュアにセリフがなかったプリキュアオールスターズという映画シリーズ
その殻を破った20周年記念作品、そしてプリキュアオールスターズシリーズの名作映画「プリキュアオールスターズメモリーズ(以降オルメモ)」を超える作品を観られるかもしれないという期待
一方で、「オルメモ」当時よりも20数名のプリキュアが増えた2023年に、子ども向け作品ゆえの70分前後という尺の都合上、すべてのプリキュアがしゃべることはなく、「オルメモ」を超える衝撃を感じることはできないのではないかという不安
正直、どちらかというと不安のほうが強かったです
そんな僕の心情などいざ知らず、上映は始まります
結論から申し上げます、「プリキュアオールスターズF」は「オルメモ」に匹敵するほどのプリキュアオールスターズ映画でした
「オルメモ」ではできなかったファンの求めていたことをかなえてくれた本当に素晴らしい作品でした
以下、印象に残ったシーンから感じたことを記述していきます
【ミラクルライトの使いどころ】
まず上映が始まって驚いたのは「ミラクルライトの使用方法」の説明がなかったことです
プリキュア映画では、ミラクルライト(以降ライト)というボタンを押すと光る小さなライトが子どもたち(中学生以下の子どもたち)に配布されることがあります
そのライトを使って、劇中に出てくるプリキュアたちを応援します
ライトが配布された今までのプリキュア映画では、冒頭でライトの使用方法を劇中に登場するキャラクターが「ライトを近くで見ないで!」や、「立ってライトを振ったら後ろの人の邪魔になっちゃうよ!」などという説明してくれるのが恒例でした
同時に、「プリキュアがピンチになったら、ライトを使って応援してね!」といったライトを使うタイミングの指定もしていたのです
そして劇中でプリキュアがピンチになると、劇中のキャラクターが観客の子どもたちに向けて、「ライトを振ってプリキュアを応援して!」というようなアナウンスもしてくれる親切設計でした
ですが今作においては、その冒頭の説明も、ピンチ時のアナウンスもありませんでした
つまり、ライトを使うタイミングを子どもたちに委ねたのです
僕はライトを使用するタイミングについてはいつでもいいと思っています
子どもたちが応援したくなったタイミングこそがライトの使い時だと思うのです
子どもたちに自由を与え、好きなタイミングでプリキュアを応援する余地を与えたところが、この作品が素晴らしいと感じたポイントその1です
そしてすごいのが、子どもたちがライトをつけたタイミングはやっぱりプリキュアがピンチになった時でした
画面に映るプリキュアたちの姿を真剣に観て、自らが思うタイミングでライトをつけて応援したと考えると、子どもたちの持っている作品を観て感じる力は、大人が思っているよりもずっと高いのかもしれませんね
【全体を通して高クオリティの画面】
2つ目の素晴らしいと思ったポイントは、全体を通しての画面のクオリティの高さです
作画の安定感もさることながら、かっこいい戦闘アクションやキャラクターたちの元気で豊かな表情芝居、美しくバリエーション豊富な背景、ゲストキャラのデザインやカラーリング、プリキュアシリーズではおなじみのセルルックな3Dキャラクター、豪華な画面を完成させる撮影etc...
挙げればキリがないですがどこを切り取っても完成度の高い画面に圧倒されました
一回目の鑑賞ではスタッフロールをほとんど見ずにEDアニメーションを楽しんだのでわからなかったのですが、聞くところによると歴代プリキュアシリーズのキャラデ・作監クラスの作画スタッフの方々が作監、原画として参加されていたとのこと
実際にどなたが参加していたかまではわかっていないので、二回目を鑑賞した際はその辺りもよくチェックしようと思っています
経験豊富で、プリキュアシリーズのことをよく知っているスタッフが集結して作っている「プリキュアスタッフオールスターズ」でもあるからこそ、作品によってキャラクターデザインが大きく異なるアニメーションでは本来難しいことが予想されるクロスオーバー作品を、これだけのクオリティで実現できたのかもしれませんね
【背景で見せる過去作の痕跡】
前半パートで面白いなと思ったのが、背景にプリキュアのテレビシリーズでよく登場した場所の痕跡を散りばめていたことです
画面を観ていて、森の中のシーンで見覚えのある木が映りました
「これって、大空の樹だよな…?」
大空の樹とはふたりはプリキュアSplash☆Starに登場する背景の一つで、この物語においてとても重要な場所です(詳しくは本編をチェック!!)
その後もYes!プリキュア5シリーズに登場した時計塔など、見覚えのある背景が散りばめられます(でもその2つくらいしかわからなかったです、僕のプリキュア理解度はまだまだですね…)
おそらくこれは過去作で使用した美術設定を元に、今回の「シュプリームが再構築した世界」という今回の舞台の世界観と合致するデザインで新規設定を描き起こしたのだと思います
(この段落における「設定」は、ざっくりいうとアニメ制作現場で用いられる「見本」のような絵のこと、設定資料集に載っているあの絵のことを指します。そのほかの段落における「設定」は「このキャラクターはツンデレという「設定」」の意味で使っています)
本来動かせるはずのない各シリーズの背景の痕跡を、シュプリームによる世界の再構築という設定を活かして新しくデザインされた背景の中に登場させたのです
このアイデアには本当に驚かされました
各シリーズのキャラクターだけではなく、各シリーズの大切な思い出が詰まった場所の痕跡を登場させてくれたのは、プリキュアファンとして本当に嬉しかったです
この「世界の再構築」という設定が、ストーリーを作るうえで生まれたのか、各シリーズの背景を登場させるために生まれたのかはわかりません
どちらにせよ、プリキュアオールスターズFが過去作の背景の痕跡を登場させたことから、物語の設定と、背景に限らずアニメ制作にかかわるすべての工程の技術・アイデアの融合によってあらゆる表現を可能にするアニメーションというコンテンツの奥深さを感じ、とても興味深かったです
【オルメモではできなかった、Fで実現したもの】
プリキュアオールスターズ映画の名作、「オルメモ」は本当に素晴らしい作品でした
各シリーズのOPテーマがアレンジされた劇伴をバックに、当時の全メインプリキュア55名にセリフ付きで、2D・3Dを織り交ぜながら可愛くてかっこいいキャラクターたちを登場させました
ですが、そんなオルメモにもできなかったことがあります
それが、「ゲストプリキュアやサブキャラクターの登場」です
プリキュアシリーズには、2〜6人のメインプリキュアとともに戦った、話数や劇場限定のゲストプリキュアが稀に登場します
オールスターズ映画四作目に登場したキュアエコーをはじめ、何人ものゲストプリキュアがいます
同様にプリキュアたちと一緒に戦ったり、サポートしたりしてきたプリキュアではないサブキャラクターたちの存在も忘れてはいけません
彼ら彼女らがいなくてはプリキュアたちがピンチを乗り越えられなかっただろう出来事がいくつもありますし、彼ら彼女らの成長もまた、プリキュアの歴史の一部だと考えています
ですがオルメモでは、彼ら彼女らが登場することはありませんでした
オルメモは、メインプリキュアにフォーカスしたオールスターズ映画でした、なのでゲストプリキュアとサブキャラクターが出てこないのは、全員にセリフを与えた尺的にも仕方がないということはわかっています
ですがファン心理としては、ゲストプリキュアだってプリキュアだし、サブキャラクターだって重要なプリキュアチームの一員なわけで、彼ら彼女らが登場しないのにはさみしさを覚えていました
それから5年、今回のプリキュアオールスターズFではそのゲストプリキュアが一同に介して、同じカットの中でミラクルライトを振っているのです
その次くらいのカットで、サブキャラクターたちがライトを振っている姿も映ります(加えて全妖精たちも集まったカットもあるのですが、妖精たちにまで触れる構成になるように組み立てなおす気力がなくなってしまったのでここでは割愛します、スミマセン…)
この一連のカットで、僕の涙腺は決壊し、出そうになる声を抑えて泣きました(もしかしたらちょっと声出ちゃっていたかもですね笑)
どちらのカットにもセリフはありません、秒数も体感1秒あるかないくらいとても短いです、なぜ面識のない彼らが同じカットに映っているのかという整合性も本来は考えなくてはいけないところでしょう
ですが、そんなことは僕にとってはどうだってよかったんです、彼ら彼女らの存在を忘れずにプリキュアの歴史として数えてくれていることがプリキュアファンとして何より嬉しいんです
これこそが、オルメモではできなかった、そしてプリキュアオールスターズFがやってのけた大きな功績であり、プリキュアオールスターズFが、オルメモに並ぶ素晴らしいプリキュアオールスターズ作品である、と僕が思う最大の理由です
【★5ではない理由】
※本章では多少作品に対するマイナスな発言をします
作品に対するマイナス発言が苦手な方は飛ばしてください
そんな素晴らしいプリキュアオールスターズFに、僕はなぜ★5をつけなかったのか
1つ目の理由は「全メインプリキュアにセリフがなかったから」です
これを理由に★を0.25だけ下げました
絵の芝居でそれぞれのキャラクターがそれぞれの性格に見合った表情や動きをしていることはたしかに嬉しいです
ですが、やっぱりみんなの声が聞きたかったです
声がないと、もう一つ物足りない感覚を覚えてしまうのです
絵の芝居と声の芝居、どちらが欠けても、そのキャラクターが「そこに生きている」という感覚を得ることはできないのかもしれません
無声時代のアニメーションならいざ知らず、現代のアニメーションにおける絵と声の芝居、その共存の重要性を学びました
同時に、オルメモとプリキュアオールスターズF、どちらにもいいところはあるが、あらゆる制約でそのどちらのいいところ両方を同時に実現することは大変難しいことなんだということもわかり、映画を作ることの難しさを知れたような気がします
そしてもう一つ、この映画は「プリキュアファンムービー」だと感じたので、これまた★を0.25だけ下げました
この映画は本当に「素晴らしいプリキュアオールスターズ映画」です
ですがそれは僕がプリキュアファンだから楽しめた部分が多かったように思うんです
これまで挙げてきた僕か面白いと感じた部分は、過去のプリキュアについての予備知識があっての面白さだと思っています
なので、それを全く知らない大人や、最近プリキュアを観初めた子どもたちは「おいてけぼり」になってしまったのではないか、と思うんです
事実、9/21現在の映画.comにおける今作の評価は★3.7で高評価とは言えず、他の方のレビューをのぞいてみると「プリキュア好きの大人向けの作品」、「おいてけぼり」といったコメントを割と見かけました
ではどうしたらより多くの人が楽しめる映画になったのか
無い知恵を振り絞ってやっと見出した僕の中の答えは「尺を伸ばす」ことです
そうすれば、もう少し劇中のキャラクターたちの内面を深彫りするようなセリフを入れ込めたり、もう少し各シーンをじっくりみせることができるようになったりして、プリキュアを知らない人でももっと楽しめるつくりにできたかもしれないし、「おいてけぼり」の人を減らせたかもしれない
(あくまで想像なので絶対そうなると言い切ることはできないですけどね)
今までのプリキュア映画が50分~70分前後の尺であることを考えると、もしかすると「子ども向け作品では、長尺だと子供が飽きてしまうので短い尺にしたほうがいい」とする何らかの統計データや、業界内での習わしがあるのかもしれません
しかし、アニメと実写の違いはありますが、同じく子ども向け作品である平成仮面ライダーのオールスター映画の尺は、だいたい90分~100分くらいでした
なのでプリキュア映画の尺が伸ばすことは全くあり得ない解決策なわけではないのでは?と思います
(もしかするとアニメと実写では職の事情はなにか違うのかも…詳しい人いたら教えてください!!!)
皆さんはどう考えますか?
皆さんの「どうしたらより多くの人が楽しめる映画になったのか」という問いに対する意見をぜひ聞かせてください
マイナスなことを言ってしまいましたが、70分前後という尺しか取れないなど多くの制約のなか、その上でプリキュア全員を登場させ、いかに面白い映画を作れるかに挑んだスタッフのみなさんに拍手と感謝、そして労いの言葉を送りたいと思います
スタッフの皆様、本当にお疲れさまでした!!!
ここまで挙げたほんのちょっとのマイナスなんてどうでもよくなるくらい、「プリキュアを好きになって本当によかった」と思える作品でした!!!
【さいごに】
以上が本作品のレビューとなります
長々と書いてきましたが、今のところこれが僕の思うプリキュアオールスターズFです
ここまで一貫して、僕はこの映画を「素晴らしい」として、「最高」とは言いませんでした
それはもちろん【★5ではない理由】で書いたことも関係していますが、まだ見ぬ「最高」のプリキュアオールスターズ映画のためにとっておこうと思った、という意味合いもあります
今後のプリキュアオールスターズ映画で、「最高」を冠する映画は現れるのかどうなのか
それは誰にもわかりませんが、まだ見ぬ「最高」のプリキュアオールスターズを夢見てこの文章を締めたいと思います
また次(おそらく来週)に観に行ったタイミングで、もっとディティールを拾った感想を述べたいと思っています笑
ここまで読んでくださったあなた、こんな長くて読みづらい文章に付き合ってくださってほんとにありがとうございます!
所詮は一ファンの戯言ですので、そういう考えもあるんだ〜くらいに受け取っていただけると幸いです
よければあなたの「プリキュアオールスターズF」の感想も聞かせてください
ありがとうございました