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ハルマゲドン590円って言葉に救われた話

#灯火物語杯


 私は宗教2世だ。

幼い頃から母の強い勧めで教会に通い、聖書を読み込まされ、厳格な教えの中で育った。
誕生会もクリスマスも、世間で当たり前の行事とは無縁の生活だった。

 教会の人々は皆優しかったが、その優しさの裏には、少しでも規則を破れば容赦ない叱責が待っていた。

 小学生の頃には、お尻をバットで叩かれることもしばしばあった。

幼い私は、それが当たり前だと思っていた。
聖書が絶対であり、教会の教えが全てだと思い込んでいた。
 しかし、心のどこかで違和感を感じていた。
友達が楽しそうにクリスマスの話をしているのを横目に、私は寂しい思いをしていた。
 学校で君が代を歌えないことで先生に呼び出されたり、宗教の話をしたことで友達を遠ざけてしまったり、心の痛みは大きくなっていった。

 中学に入ると、教会の教えに疑問を持ち始めた。
でも、母親の強い信仰心と不安定な精神状態を考えると、反抗することはできなかった。
 
 大学を卒業し、母の強い勧めで教会の信者である女性と結婚した。
結婚生活は順調だったが、心のどこかには満たされないものがあった。

 そんな時、会社で優子と出会った。
彼女は明るく気さくで、いつも笑顔が絶えない女性だった。
ある日、酔った勢いで
 「ハルマゲドン」
という言葉が口を突いて出た。
優子は
 「松家ですか、吉野家?590円?」
と笑った。
その瞬間、私は心が解放されたような気がした。

同時に
「あぁ、これが邪悪な誘惑なんだな」
と直感的に感じた。

沼に落ちたくなった。

クリスマス・イブに優子とはじめてディナーを楽しみ、一夜を共に明かした。

 優子の中に手をいれて”そこ”を徐々に触る。

先を突いていると奥が濡れそぼって来て、とろりと指先を湿らせる。

そのうちに、優子の体の奥が小さく痙攣し始めて快感に変わり全身が硬直する。

息が止まり、呼吸が苦しい。

快感が頭を突き抜けたと同時に、力が抜け苦しさから解放される。

はぁはぁと浅い呼吸を繰り返していると次第に気持ちが冷静さを取り戻す。

妻の顔が浮かんだけれど無理矢理に振り払った。

ふたりの吐息が触れる。

優子は強引に舌をねじ込ませてくる。
髪をクシャっと掴んで、今度は私の舌を強引に入れた。

お互いの中へ交互に入りながら舌で粘膜を辿りざらりとした表面を撫であう。

いきおい左手の長い中指をそこの中に差し込んでしまう。

何の抵抗もなく、するっと指を飲み込んでくる。

唇で優子の唇をこじ開ける。

ずっとこうして抱き合っていたい。

このまま時間が止まってしまえばいいのに。

するっと優子の中へ入っていく。

もう、このまま殺されてしまってもいいと思ったクリスマス。

優子が私を宗教2世から救い出してくれた。

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黒田裕
恋愛エンディング小説として体験したことや思ったこと等々を記しています。 共感してくださる方やオトコのココロの内をのぞいてみたい方がいたら とってもうれしいです。チップしていだけると励みになります。 よろしくお願いいたします。