【三原市】ミニ四駆カフェ 茈星(さいせい)
三原市といえば、
陸は新幹線駅でもある三原駅、
主要道路から接続が近い高速道路、
海は瀬戸内の島々へ繋がる三原港・須波港、
空は広島空港と、
陸・海・空路すべてを備えた市。
広島県東部の玄関口と言われることもあります。
そんなまちなら、さぞ発展しているに違いない!
と思って駅前に降り立つと、
出迎えてくれるのは背伸びしようとした田舎町の空気。
福山市のような都会的な光景ではありませんし、
尾道市のように観光客が写真を撮りまくっていることもない。
趣き・味わいがあるわけでもない。
かつては駅前にふたつのデパートを持っていたことから、
近隣の市から人が訪れてきており、
「三原になければ福山。
福山にもなければ西条、
それでもなければ市内(広島市のことを地方民はこう呼びます)」
県内の栄えているまちのひとつでした。
デパートは消えて市の施設になり、
電器店、書店、ボウリング場は飲食店に、
ゲームセンターは閉業、映画館も閉業、
商店街はシャッター通り化、
ゲームショップは飲み屋となり…
そのくせパチンコ店は中〜大型店が4店舗存在しており、なんとも中途半端です。
色街も備えていたらしいのですが、歴史の中で消滅。
条例により、名残が残ることもありませんでした。
駅前から若者の姿が消え、今に至ります。
誰が言ったか、趣味人には厳しいまち。
「なあ、今日はどこで遊ぶ?
どこに集まる?」
それなら三原にしようか。
三原がいいよ。
そんな声が聞こえる日が、再びやってくるかもしれません。
今こそ再生せよ、三原市。
三原市で知る人ぞ知る系の有名店を挙げろというと、
ガンプラ界隈から出てくるのが、三原駅北口側にある「大浜屋模型店」。
かつては尾道のシグナル(閉業)、
三原の大浜屋で県東部二大模型店でした。
プラモデルコーナーのある玩具店は多いですし、今なんかは電器店でも扱っていたりしますが、
専門店となると極端に数が少なくなります。
大浜屋模型店は専門店ゆえに今も旧キットから最新キットまで膨大な数を扱っており、
ガンプラ・模型・ミニ四駆好きから厚い支持を得ています。
YouTubeでは、モデラー兼バイカーの方がツーリングを兼ねて紹介している動画がいくつかあるくらい。
三原市には、“プラモデル好きが訪れるまち”の肩書きはあるのです。
ただ、点。
スポット。
腰を据えての交流の場があればな、と誰しもが思っていました。
点に導線をつけたのは、ミニ四駆でした。
スポットから、エリアへ。
三原駅から駅前商店街を抜けると、
県道185号線の向こうに三原市役所が見えます。
帝人通りを市役所方面に向かうように歩いていくと見えてくるのが、
ミニ四駆カフェ 茈星(さいせい)。
三原市港町3-8-1、区画の角地に位置しています。
近くの居酒屋で呑んだ足で寄ってみたら、その日は偶然開店後初の大会の日。
皆さん魂が込められたカスタムマシンを持ち込み、
テクニカルなコースを走らせていました。
ああ。
この雰囲気、あれだ。
放課後だ。
部活動とは異なり、
堅苦しさややらされている感が薄まり、代わりに趣味性が濃くなる。
ゆるさの中に、楽しさをひたすら追いかける深さがある。
みんな仮面を脱ぎ捨て、素の自分で横並びになれる。
クラスの人気者でも、放課後の世界ではモブだったりする。
秀才が、お前どんくさいんだよと尻を叩かれたりもする。
遊びの天才たちが、放課後のヒーロー。
ただの木の枝が伝説の剣になったり、
空き地が秘密基地になったりと、ヒーローは見えている世界を夢のような世界に作り変える。
「次はレースしようや。
アバンテ持っとるじゃろ、持ってきんさい。
神社の境内で、大会じゃ!
じゃあ、また明日!」
いつからか、僕たちの世界からなくなった放課後。
思い出の中だけの存在になっていた放課後。
その続きが、茈星にはありました。
歳を重ねていく中で、
「大人はこう在らなければならない」
「◯歳らしい姿はこうだ」
という生き方テンプレに、個性を封じ込められていく大人たち。
飲み屋でもお洒落な喫茶店でも、聞こえてくるのは愚痴ばかりです。
ある程度の歳になるとわかるのですが、
ネガティブな話、
ネガティブな話に見せかけて自慢話に繋げる“大人ぶる大人”からは、楽しそうなオーラが消え失せてしまっています。
対して、趣味人としての自分を大事にしている“子どもっぽい大人”は、
立ち話ひとつにしても話に惹き込んでいくような楽しい話を用意して、
気が付けばお互い少年の瞳になっていたりします。
カッコいいのは、どっちなのだろうか?
令和の三原の街角に現れた、茈星という名の放課後。
そこに、答えがあります。
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