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深夜のタクシー

「キュイーン」「テケテケテケッケケ」
 
エレキギターの音色が深夜のタクシーに響く。やかましいと感じる人もいるだろうが、ほろ酔い気分の自分には丁度よい。運転手がエレキギター好きだと知り、話を聞く。

「エレキギターですね。これは運転手さんの
 好みですか?」
 「そうなんです。エレキギターが大好きで」
 「へぇ~いつ頃から好きに?」
 「長いっすね。中一の頃。57〜58年前か  
 ら。かっこいいですね」 
 「かっこいいですね」
 「ちょっと弾いたこともあるんですよ。僕ら  
 団塊の世代にとって、本当に憧れだったんで
 すよ」
 「エレキギターの音は言葉で表現すると、
 テケテケテケですかね?」
 「ちょっと違うな!トゥルトゥルトゥルです
 よ」
 「トゥルトゥルトゥルふ~ん」

エレキギターの音には憧れが詰まっている。エレキギターの音色を的確に表現しようとする自分に、彼のトゥルトゥルトゥルという表現は新鮮だった。普段は聞き慣れた音色でも、誰かと共有する時間と場所が違えばその音色にも新たな魅力が加わるのかもしれない
 左手の、ローソンが流れていった。


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