日本は格差が深刻なのか?それとも深刻と"考える人が多い"のか?
例えばこういう記事なのだが、一体どういうニュースなのだろうか。
マスメディアが独自に世論調査をし、その結果を記事にするというよくあるパターンではある。だが、「経済格差が深刻である」ことと、「経済格差が深刻であると考える人が多い」こととは、全く別の話である。「考える人が多い」ことが、果たしてニュースと言えるのだろうか。
人々が社会全体について考えるための情報源の多くはメディアである。ネットメディアも発達しているが、多くの人は今でもテレビ新聞から情報を得ている。
とすれば、読売新聞社のようなマスメディアがこういう記事を作るということは、自ら社会の状況を発信して、つまり「経済格差が深刻である」と広めておいて、その結果を検証しているに過ぎない。完全なマッチポンプである。意味のあることとは思えない。
経済格差を計る方法はいくつかある。代表的なのはジニ係数で、総務省や厚労省、またOECDなどの国際機関から調査結果が出ている。
それらによれば、日本の格差は、ざっくり言えば米英よりは少なく大陸ヨーロッパよりは大きい、というところか。こういう客観的なデータを広めることこそがマスメディアの役割なのではないか。
マスコミが独自に調査するなら、例えば「生活が苦しいと考えている人」の割合ならばまだ分かる。「個人が社会をどう見ているか」ではなく「個人がどういう状況なのか」を十分な数集めるのはマスメディアが得意かもしれないし、社会を考えるきっかけにはなるだろう。自家用車や大型家電の保有率など、何等か客観的な経済状況であればなおよいと思う。
もっと言えば、資本主義なのだから格差ゼロということは理念としても現実的にも得ない。ヨーロッパは高税率の国も多いから、単純に「格差が少ないほどいい社会」とも割り切れないはずである。
いずれにしろ「深刻と考える人が多い」という記事を何気なく目にして、本当に客観状況として深刻なのだと誤認する読者はいるだろう。マスメディアとしては「日本が危ない」と煽った方が読者は増えるだろうからそれが狙いなのかもしれない。
何を考えてこういう記事を流しているのか分からないが、結果的は悪質な誘導記事と思うしかないのではないか。