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3年ぶりのお久しぶり

「あなたに親友はいますか?」

たま〜にそこまで親しくない人から聞かれることがある。

「おぅ!〇〇ってやつよ!最初はお互いに気に食わねぇ奴だと思ってたんだけどよ、ある喧嘩がキッカケで理解し合えたのよ。男は拳を交えてナンボのもんよ!」

そんなTHE男の友情的なエピソードがあればいいのだが、
僕は生まれてこのかた殴り合いの喧嘩というものをしたことがないし、
世間一般の男性よりほんの少しだけ平和主義的
思考が強いと思っている。

それに親友というコトバから滲み出る熱量のようなものも、あまり得意じゃない。

文化祭終わりに「俺たち一生の親友だよな!」と肩を組んでいた2人組がその後些細な理由で絶交したケースを知っているし、
映画版ドラえもんでジャイアンがのび太に放つ名台詞「心の友よぉ」の信憑性は限りなくゼロに近いと思っている。
だいたいその翌週の通常放送では、ボコボコにされた哀れな少年の姿がそこにあった。

その場の熱にほだされて、親友なんてコトバを軽々しく使うべきじゃない。
少年だったあの頃、僕は心の中でこっそり決意し、今でもその考えは変わっていない。

そんなこじらせ系の僕にも、
両手で数えるぐらいの親しい友人はいる。

大学入学を機に関西でひとり暮らしを始め、
割とアクティブに過ごした4年間だったので、
本当にいろんな出会いがあった。

その中でなんとなく波長があった人が数人いて、
社会人になってからも付き合いはゆるく続いている。
年に数回会うか会わないかの関係が、
かれこれ10年ぐらい続いてる。

それよりも長い付き合いとなると、
地元(香川県)の友人が2人いるだけだ。
かれこれ24年の付き合いになるだろうか。

彼らとは小学校の時に出会った。
クラスが一緒になったことは一度しかなかったように思うが、
中学校も含めて9年間同じ学び舎で過ごした。

高校時代は1人だけ違う学校に行ったが、
土日はだいたい3人で集まって、
ゆるゆると遊んでいた。

大学時代は3人とも県外の大学に進んだ。
集まるのは夏休みと春休みの数日だけ。
各々の生活拠点が違ったこともあり、
それぞれの近況報告がとても興味深かった。

社会人になると僕は大阪で就職し、
2人は地元に戻った。

あれから8年が経った。
それぞれが違った道に進み、
それぞれの生活がある。

毎年集まっていたけど、
互いに忙しくて集まれない年もあった。

そんな年が続いて、気づいたら3年経っていた。
普段も頻繁に連絡をとるわけでもないので、
たまの帰省のタイミングでゆるりと送るお誘いメールに反応してくれるのは本当に有難いと思っている。
特に今年は3年ぶりだし。

流石に3年ぶりとなると、
会う前は多少はドキドキするものだ。
でも、実際会ってみると3年の空白なんて無かったかのように、
ゆるりとした雰囲気が僕たち3人を包んだ。

その後は3軒ハシゴして、
いつもの調子でのらりくらりと呑んでいた。
現在と未来についての話も色々したが、
やはり盛り上がるのは過去の共通体験についての話だ。
何年経っても色褪せない、
愛おしき可笑しな思い出たち。

3年経ってもあまり進歩がないような気もするけど、
そんな集まりだからこそホッとできるんだろう。
見栄を張る必要もない、
等身大の自分でいられる場所だから。


「んじゃ、また、いつか」

帰り際に僕はゆるりと呟いた。
次に会えるのは数ヶ月後なのか数年後なのか。
それは誰にも分からないし、
そこを追及する者は誰もいない。

僕らがお互いを親友と呼び合う日は来るのだろうか。
きっと来ないだろうな。
それを口に出したら、お互い恥ずかしくて、
もう会えないような気がするから。

そんな掴み所のないふんわりした関係が、
僕らには丁度いい。


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