中華粥に許して欲しい
おかゆは病人の食べ物だと思っていた。
積極的に食べるものではないし、特に子どものころはおかゆのべちゃっとした食感と、捉えどころのない淡い風味が苦手だった。そもそも風邪で体調が悪いときに食べているから、いい思い出があるわけがないんだ。
おかゆの魅力に気づいたのは3年くらい前、重度の「二日酔い」という病気になったときだった。暴飲暴食によりぐったりしている胃腸やメンタルに対して、滋味あふれるたまご粥を食べたときの、染み渡るほっこり感。
なんだか許されたような気がした。
健康が何より大事だと言った同じ口で大量のビールを飲み、仕上げにラーメンを食べて帰ったことを、おかゆは許してくれるのである。許す、というのは優しさの象徴的な行為だと漫画で読んだことがある。だから、おかゆは優しく慈悲深い。
「許し」「優しさ」というおかゆの魅力に気づいたことは良かったが、味はあくまで淡白なままだった。優しい、確かにやさしいのだけれども、それだけじゃおなかがすくわ。本当はせつない夜なのに。どうしてかしら物足りないのである。
風邪を引いてないけど優しくされたい、しかしおかゆでは物足りない。
こういったわがままへのソリューションとして、わたしは中華粥を見つけた。銀座と東銀座のちょうど間くらいに位置する中華料理店「好々亭」。ここは中華粥の種類が豊富で、平日ランチタイムでは点心がセットにできるので特におすすめだ。
ショウガを利かせた鶏のスープで炊いたおかゆ、というのがイメージとしてとても近い。日本のおかゆと違ってお米を炒めてから炊くことで、米が割れて溶け出し白濁しているのも特徴。ポタージュスープのようである。
熱々のお粥はどうやってもゆっくり食べるので消化にも良いし、ショウガの効果で体があたたまる。鶏スープの旨味と、お米の甘みとやわらかさが感じられてとても美味しい。
上記の中華粥をベースとして、トッピングに揚げた春巻きの皮みたいなやつや、ザーサイなどをアクセントとして楽しむのも素敵だ。具材を足すのもいい。玉子や鶏肉などはもちろん、海鮮もよく合う。ここまでくると、もはや物足りなさなど感じない。
それでもまだお腹が減っているときは、粥の他に一品料理も注文してしまえばいいと思う。中華料理屋なので、ひと通りのものは食べれる。ハッキリした味の中華料理と、中華粥の相性は抜群である。風邪を引いている時にはできない楽しみ方だし、調子に乗ってビールも飲んでも、慈悲深いおかゆはきっと許してくれる。
わたしは健康なときにだって優しくされたいし、そんな自身の弱さを、都合よく許して欲しいと願っている。