海洋散骨のお話
葬儀の形の多様化とともに、納骨にも様々な形態が登場しています。
今回は少し趣を変えて、今年4月に私の家族が行った海洋散骨について綴ります。
■2020年4月5日(晴れ)
時を少し戻して、2020年4月5日。
1月31日に永眠した父親が、生前から「私の遺骨は海に撒いてほしい」と話していた希望に従い、私たち家族は神戸のメリケン波止場に行きました。
遺骨を海に撒くことを望んだのは、父が外国航路の船乗りだったからです。
外国航路の船員として、そして東京湾のパイロット(水先案内人)として、人生の大半を海上で過ごした父にとっては当然の希望でしたし、遺族である私たちの望みでもありました。
ただ、聞いたことはあっても経験のない海洋散骨。
そもそも海に散骨することは法的に問題ないのでしょうか?
■海洋散骨の位置づけ
この点については「節度をもって行う場合、処罰の対象としない」という見解のようです。
遺灰を土中に埋めるのではなく、遺骨を粉末化して供養のために撒くことは、モラルを守っている限り法律違反にはあたらず、非公式ながら法務省の見解は、「散骨は、希望するものが相当の節度をもって行う場合は、処罰の対象としない。今後は社会的な取り決めが設けられる事が望ましい」となっているそうです。
「節度を持って」を守るためには、骨を遺骨とわからない状態にすることが必要で、具体的には遺骨を細かいパウダー状にする必要があるようです。
※法律上は死体等遺棄罪(刑法190条)と墓地・埋葬等に関する法律(墓埋法)があり、死体等遺棄罪では、遺骨を遺棄すると3年以下の懲役刑となります。
今回お世話になったのは、大阪の堺にある「レイセキ」さん。こちらは海洋散骨の正規業者です。
■散骨までの準備
さて、海洋散骨を決めて最初に行うことは、散骨を希望する海域と候補日の打ち合わせです。なぜなら、希望日に希望する港で船の準備ができなければ、そもそも散骨ができないからです。
また、海が荒れて出航できないと散骨もできませんから、海が穏やかになる4月以降の方が望ましいというアドバイスもいただきました。
この「天気」は、海洋散骨にとって厄介な問題で、当日に海が荒れて危険と判断されると、当然ながら延期になってしまいます。遠方から参加される人がいる場合などは、かなり気を付けるべきポイントですね。
散骨の日が決まりますと、それまでにやっておかなければならないのが、遺骨を粉末状にする作業です。
前述のとおり「節度を守る」ために必須となる工程です。
ギリギリだと、出航当日に行うことも不可能ではないそうですが、パウダー状にする作業に1時間ほど(遺骨の量によって異なります)かかることと、当日海に撒きやすいように、水に溶ける紙に包んでくださる作業もあるため、できれば1週間ほど前に済ませておくのがよいようです。我が家も約1週間前に堺の事務所で粉骨作業をしていただきました。
■散骨当日の動き
そして散骨当日。
参加する人数によって、船の大きさが決まりますが、我が家は6名での参加。
自宅から車で1時間15分ほどの場所にある、神戸のメリケン波止場に10:30ごろ集合し、必要な注意事項の説明をうけたあと、ライフジャケットを身に着けて、いざ乗船。
散骨ポイントまでの航行時間は約30分でした。
風は強く、寒さもあったものの、青空の広がる天気に恵まれ、神戸空港や明石海峡大橋がよく見えました。
何より家族が感慨深く思ったのは、パイロットタグボートが頻繁に行き来していたこと。
横須賀水先区で水先人をしていた父は、これと同じタグボートに乗って仕事をしていたんですよね。本当に父がすぐ近くにまで来てくれたような気がしました。
予定の海域に着くと、エンジンが止められます。
海に溶ける素材で作ったお花や少量のお酒を撒き、パウダー状にした遺骨を撒いたあと、その辺りを船でぐるっと回ってから港に向かって戻りました。
出航から着岸までの所要時間は、1時間20分ほど。
予報では、風速6〜7メートル、波の高さ0.7メートルとなっており、ちょっと揺れが大きくなるかもしれないと言われてましたが、79歳の母を含め、参加した家族はみな何も問題なく戻ってきました。
海上から見る神戸の街並みがきれいでした。
■海洋散骨の費用
さて、海洋散骨の費用ですが、基本的には「遺骨の粉砕作業」と「船代」の2つなので、「粉砕する遺骨の量」と「借りる船の大きさ」によって大きく違ってきます。もちろん、どの海域を選択するかによる差も出てきますし、業者によっても違ってくるでしょう。
また、我が家の場合は、知人からのご紹介によって少しご配慮いただいたこともあるので、実際の金額をそのままご紹介することはできませんが、概ね25万~30万円前後と考えていただければいいのではないでしょうか。
一般社団法人日本海洋散骨協会のサイトに、散骨に関するガイドラインや加盟事業者が掲載されていますので、実際にご興味のある方はこちらを参考になさるとよいでしょう。
ということで、少し異色な記事でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?