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公的年金の見直しに関するお話し
株式市場の暴落で始まり、南海トラフ地震臨時情報が発表され、最後は迷走する台風10号に翻弄された2024年8月は、いろいろな意味で記憶に残る1ヶ月となりました。
それにしても、世の中何が起こるかわからないですね。
ファイナンシャルプランナーとして、将来のライフプランを予測する作業を日常的に行ってきましたが、最近は「将来のことはわかりませんからね~」という会話をすることが多くなっていると感じます。
実際、将来を正確に予測するなど不可能ですから、ライフプランもあくまでも「ガイド」にすぎません。大切なのは「何が起こるかわからない」という不安な状況を放置するのではなく、「こういうことが起こる可能性がある」という予測を立て、対策を検討できる状況にすることなのだと思うのです。
■公的年金制度の基本
今月のお題は公的年金です。
公的年金といえば、退職後の収入の柱として受け取る「老齢年金」を思い浮かべる方が多いと思いますが、老齢年金のほかにも「障害年金」と「遺族年金」があり、いざという時の生活保障の役割を担っています。
ですから大切なのは、公的年金はあくまでも「保険」であり、損得で考えるものではない、という視点を持つことです。
その上で、世の中の環境変化に応じて常に制度は見直されており、2024年は5年ごとに行われる見直し作業(財政検証)の年でした。
7月3日に公表された2024年の財政検証の内容は、厚生労働省のサイトで確認できます。
■所得代替率を意識する
公的年金のうち老齢年金は、退職後(や引退後)の生活を支える収入の柱となるものですから、関心が高いのは当然です。
そして、年金に関する情報の多くは「年金は当てにならない」「年金制度は崩壊している」といったネガティブなものなので、不安に感じる方が多くなるのもまた当然の流れです。
もちろん、冒頭に書いた通り、将来のことは誰にも分りません。
だから財政検証では、人口構成の変化や経済成長の見通しに応じて、将来の年金がどうなるかを試算しています。ちなみに、僕は年金の専門家ではないので、細かい分析をするつもりはありません。詳細を知りたい方は、先ほどもご紹介したこちらの厚生労働省のサイトで資料を確認してみてください。
それはさておき、将来の年金給付水準を測る場合「所得代替率」が使われます。
これは「年金を65歳で受け取り始めたときの金額が、そのときの現役世代男性の平均手取り収入の何%になるかを示したもの」です。
今現在61.2%の所得代替率が下がることは避けられないけど、50%は下回らないようにします、ということを前提に考えられています。
この所得代替率。
今回の試算では、実質経済成長率が1.1%の「成長型経済移行・継続ケース」では、2037年度に57.6%となり、成長率をマイナス0.1%に設定した「過去30年投影ケース」では、給付水準の低下が2057年度まで続く結果、所得代替率は50.4%まで下がるとされました。
■将来の生活設計に生かす
ここで気を付けないといけないのは、所得代替率は「その時の現役世代男子の平均手取り収入」であることです。
これから先、現役世代のお給料が増える保証はないものの、現実に増えている会社も少なくありません。もちろん、この話が出ると「それは大手企業の話で、世の中の大多数である中小企業のお給料は上がっていない」という反論があります。
厚生労働省が公表している毎月勤労統計調査による2023年の1人当たり賃金は、数字そのものを見る「名目」では1.2%の増加となっているものの、物価の影響を考慮した「実質」では前年比2.5%の減少となっていますから、これは切実な問題です。
でも、だからと言って「年金は全く当てにならない」という話は極端すぎるので、気にされなくてよいと思います。
大切なのは、「ご自身のライフプランを成り立たせること」であり、その際の収入項目である公的年金について、「今より2~3割下がる可能性を想定する」ことです。
年金受給額が月額20万円の人にとって、3割の水準は月額14万円です。
実際には、収入が減れば支出も抑えるケースが多いと思いますが、仮に支出は20万円を維持したいということであれば、差額の6万円をどうするか考えることが大切だという話です。
毎月6万円の収入を得る道を考えるのも1つでしょう。
毎月6万円を取り崩せるだけの金融資産を築くことも1つでしょう。
月6万円は年間72万円ですから、引退後の生活期間を30年と想定した場合、2,160万円の金融資産があれば「全く運用しなくても」賄えることになります。
いずれにしても、年金に関する報道によって、ご自身の将来の生活すべてを不安に感じる必要は無いという点を意識することが大切だと思うのです。
■公的年金は「保険」である
そもそも、最初にも触れたとおり公的年金は「保険」であり、長生きに備えると同時に、亡くなった時の遺族の生活や障害状態になった際の生活を保障する役割もあるものです。
そのうえで、今の年金制度の枠組みは、将来の少子高齢化を見越して組み立てられているものですから、我々が心配していることのほとんどは、すでに対策がなされているというわけです。
そして、公的年金制度の財政については、厚生労働省が作成しているこちらのショート動画(1分弱です)も一度視聴されることをおススメします。
■遺族厚生年金の見直し
さて、年金いついてはもう一つ、遺族厚生年金の見直しも話題となりました。
この見直しを報じた多くのニュースのタイトルだけを見ると、「今までずっと受け取れていた年金が、5年限定になっちゃうの?」という印象が強いようで、実際「子育て支援から遠のいている」と感じられる声が多くありました。
ここでも、やはり冷静に情報を得ることが大切です。
まず、今回公表されたのは「案」であり、決定事項ではありません。
これを元に、様々な意見を伺って、最終的な法案をまとめますという話ですね。
そのうえで、主な案の内容をざっくり伝えると
●遺族年金改正の見直し案
①現在40歳以上の人については現行制度を維持し、長い期間をかけて改正する
②現在受給中の人に対しても現行制度を維持する
③現在39歳以下で、配偶者死亡時に60歳未満で、その時(配偶者死亡時)に18歳到達年度末の子(一定の障害状態にある子の場合は20歳未満の子)がいない場合の遺族厚生年金の支給期間を5年間の有期にする
というものです。
そしてこれに関しては
「20代から50代に死別した子のない妻に対する有期給付の対象年齢の引上げの施行に当たっては、現に存在する男女の就労環境の違いを考慮するとともに、現行制度を前提に生活設計している者に配慮する観点から、相当程度の時間をかけて段階的に施行することとする。」
と、書かれています。
SNS上で「いきなり5年になるなんてありえない!」という声を見かけましたが、いきなりそうはならないということです。
■見出しだけではわからない、大切な視点
そして、これまで問題とされていた点を改善する見直しも盛り込まれています。
現在の遺族厚生年金は「亡くなった配偶者の厚生年金額×3/4」という計算式になっていますが、この「3/4」が無くなる予定。ようするに1年あたりの受給額は増えるということです。ちなみに、受給者に求められていた年収要件も無くなる予定です。
さらに言うと、「死亡した配偶者の保険料支払い実績を、最大半分遺族に移転し、老後に受け取る年金額が増えるようにする。という仕組みも導入が予定されています。
さらにさらに、今回の改正は遺族厚生年金に関するものですが、「子に支給される遺族基礎年金」についても、親の再婚や養子縁組などに影響を受けることなく、18歳の年度末までは受給が継続できるようになる予定です。これ、結構大切な視点だと思います。
子ども3人が大学まで通った親の一人として、子の定義が「18歳の年度末(=高校卒業まで)となっている点は見直しを検討して欲しいものの、成人年齢が18歳になっている以上、これも仕方ないのかな~という思いです。
なお、こちらに関しても詳細は厚生労働省が公表している資料を見るのが一番です。
全40頁のため、見る気も起きないかもしれませんが、12ページ以降は参考資料ですから、実質10ページほどにまとまっています。
■プライベートな出来事から
最後に、FPとは全く関係ありませんが、私の二女が滋賀県大津市でコーヒー豆の焙煎所を始めましたので、ちょっと紹介させてください。
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お店の名前は「いるば」。
2024年7月29日に開店しました。
コーヒー豆を煎る場所であり、
人が安らいで居ることができる場所。
そんな想いを込めての命名です。
最寄りのJR石山駅は、京都駅から在来線で4駅15分程度。石山駅からは徒歩3~4分の場所にありますから、関西にお越しの際はぜひお立ち寄りください(^^)
お店に関しては、大津市在住のフリーのライターSariさんが、初日にお店に立ち寄ってくださり、素敵な記事にまとめてくださいました。
お店の様子もよくわかると思いますので、ヤフーニュースで取り上げられたこちらの記事を是非ご一読くださいませ。
営業時間は10時~18時。水曜日が定休日+不定休となっておりますので、お店のインスタで休業日をご確認の上、お越しくださいませ。
通信販売も始めましたので、ご利用の方はこちらからよろしくです!