九龍城と八戸ノ里
ようやく秋が来てくれた。
大変いい気候で助かる。そうだ、助かるといえば「ありがとう」の代わりに「助かる」を使うことが僕は多かったりする。それいいね!私も使おうかな、と電話口で告げる彼女には未だタジタジである。まあでも、ありがとう、はたくさん言ったほうがいいよな。助かるもいいけれど。これは自省である。
さて、前から少し間が空いてしまった。どうやら僕は生活に一息つかないと中々筆が乗らないようで、この2ヶ月はそこそこてんやわんやしていた。
書を捨てよ、町に出よう、
とは存外使い古された言葉かもしれないが、僕の場合は海外に行ったりして環境がガラリと変わると文章が書けなくなるというか。なんだか書こうかな〜という気にならなくなるのです。
思い返せば、大学時代最後に北欧へ行ったり、雪山に一ヶ月籠ったりした時も、それなりに時間はあったはずなのになかなか文章を投稿することはしていなかったように思う。そんなもので。
さて、少し前に香港に行ってきた。
生意気なことに現地でお仕事のお手伝いをさせてもらった。若輩が出来ることなど高が知れているのだが、それでも自分がその場に存在していた意味を少しでも残しておけたならばたいへん幸いである。
九龍の面影を残す━━クーロンではなく、現地ではカオルーンと読むらしい。英語で話しかけているのに浴び続けた中国語は結局ほとんど分からなかった。そうそう、『九龍ジェネリックロマンス』もうすぐアニメ化と実写映画化どちらもするらしい。おめでたいことである。アニメといえば最近は専ら『チ。-地球の運動について-』の完成度に唸らされている。そもそも原作も超面白いが、とにかく曲もいい。サカナクションの怪獣、まだアニメサイズだけだけれど、みんな聞くべきだ。こんなにアニメのオープニングで何度も聞いたのは『平家物語』のオープニングを飾った羊文学の光るときくらい━━香港という場所だが、進化だとか、改変だとか、そういう言葉が似合う街が多かったように思う。武者修行にはもってこいの地だな、と感じた。ただ、油麻地という下町の本屋はとても雰囲気が良くて気に入った。多分もう何度かは訪ねに行く。あと火鍋がバカみたいにうまくて冷房は寒すぎる。あり得ないくらい部屋が寒いのだ。今回仲良くなった中国人の同期によると「香港は世界一冷房がキツい」らしい。そして厄介なことに「香港人はその世界一に誇りを持ってる」。頼むから観光地のホテルでは捨ててくれよその誇りは。鍋の底に溜まったアヒルの血の塊「鴨血」を他の日本人メンバーが誰も食べないから仕方なく口に運びつつ、僕の母国の食べ物を食べてくれて嬉しい!と快活に笑う彼に恨み節を吐いてみる。ちなみに鴨血はその名前よりも全然クセがなくいただける。そろそろ冬だし、うっかり中国で火鍋を食べる際は是非。
帰国してからはいわゆる超繁忙期に備えるためなんやかんや、という具合だが。
そんな中でも、僕の変則的な休日に合わせて時折時間の合間を縫っては会ってくれる友人たちへの感謝を今回は伝えたい、と思って綴った次第である。
むろん同期も、先輩も、幼馴染も、よく会ってくれているみんな。ありがとう。
さすがに香港へ発つ前の日に、特に約束もしていなかった東大阪でばかり集合していた彼と蒲田でたまたま会ったのにはタイミングと運の良さに驚いたが。
今回は、学生時代のある後輩たちに焦点を当てたい。
少し前に、
どれくらいぶりだろう、半年?10ヶ月?それくらいぶりに、2人の後輩とサウナに行った。
10月に1人で来訪した佐賀県 御船山楽園ホテルにだってあまりにも感動したが、やはり僕にとっての実家のようなサウナは奈良健康ランド。
とにかく田舎だから空いている。そこがいちばんの素敵なポイント。
案外地元は変わってほしくないと思えるような派閥かもしれない。
しかし、思い返してみると彼らとはいろんな場所に行った。よくもまあ毎度僕の思いつきに着いてきてくれたものだ。
最早、後輩という括りというより友人とした方が正しいのだろう。
その帰りに,卒業ぶりに大学に連れられることになった。久々に最寄駅に着くと、たいして時間も経っていないが。なんだか大学生に戻ったような気分がした。今度は最寄の銭湯にも行きたいし、かつてのアルバイト先にも寄って鳥塩レモン丼を食べたい。
夜には彼らが呼びかけてくれて、二つ下の後輩たちまで居酒屋に集まってくれた。僕が彼らにしてあげられたことなんて数えるくらいしかないのだけれど、うれしかったな。
あんなに幼なげに見えたお前たちも、たいへんよい先輩をしているんだな、とも。
また、大学の中の、偏屈な名のついた団体の次世代を担っていく彼ら彼女らに細やかな幸が在らんことを。