「終わりの日」 リチャード・マシスン -読後メモ#009-
夕食も終わろうというときになって、グレイスが席を立って箱を持ってきた。腰をおろして箱を開ける。出てきたのは白い錠剤だった。ドリスが大きな瞳で探るようにグレイスを見つめる。
「デザートよ」グレイスがドリスにいった。「デザートにこの白いキャンディを食べるの。みんなでね」
「ペパーミント・キャンディ?」ドリスが尋ねる。
「ええ、ペパーミント・キャンディよ」
グレイスがドリスの前に錠剤を置く。レイの前にも。リチャードの頭皮がぞわりと泡立った。
地球滅亡のカウントダウン。最後の日に向かって終わり方を模索する若者。
人生の閉じ方は自分で選択する。
「自分にとって大切なものはなにか?」を考えた作品。
物語は、終わりの日に向けて、感情的にクライマックスになります。
SF の状況における「現実の」人々の体験を表現していて、近い距離で感情に干渉します。
この世界の苦悩、愛情の表現がわたしの心をざわつかせます。
現実におこることのない状況。
でも、現実と重ねて考える。
選択、後悔、今までの人生。
振り返ることで心臓をつかまれる感覚に陥ります。
世界観メモ
ゾンビワールド。移動の場面はまさにそう感じました。
小説 「終わりの日」
リチャード・マシスン(Richard Matheson) 著
The Last Day (1953)
安野玲 訳
BOOK
『20世紀SF② 1950年代 初めの終わり』
目次
初めの終わり/レイ・ブラッドベリ
ひる/ロバート・シェクリイ
父さんもどき/フィリップ・K・ディック
終わりの日/リチャード・マシスン
なんでも箱/ゼナ・ヘンダースン
隣人/クリフォード・D・シマック
幻影の街/フレデリック・ポール
真夜中の祭壇/C・M・コーンブルース
証言/エリック・フランク・ラッセル
消失トリック/アルフレッド・ベスター
芸術作品/ジェイムズ・ブリッシュ
燃える脳/コードウェイナー・スミス
たとえ世界を失っても/シオドア・スタージョン
サム・ホール/ポール・アンダースン
解説━━SFブームとその終焉 / 中村融