【いつか来る!?】税務調査の対象に選ばれやすい事業者の特徴3選
いきなりですが事業主の皆さん
税務署って、どうやって税務調査の対象者を選んでいると思いますか?
僕は前職で税務調査官として勤めていたので、皆さんのお金や税金に関するご質問を頂くこともあるのですが、中でも特に多いのがこの質問。
「うちみたいなところにも税務調査は来るのでしょうか?」
普段どおり仕事をしていたら突然税務署がやってくる…。
そんな場面を想像して不安になっている事業主さんも少なくないようです。
そこで今回は、”税務調査の対象者の選ばれ方”というテーマで書いていこうと思います。
この記事を読み税務署について知ることで、漠然とした税務調査に対する不安が少しでも軽減されたら嬉しいです。
調査対象者はどうやって選ばれる?
税務調査の対象者はどうやって選ばれるのか?といったところからお話ししますと、結論、調査担当部門の人が直接選んでいます。
ある程度めぼしい事業者をリストアップしており、そこから特に調査時期や諸条件を鑑みて選んでいることがほとんどです。
特徴1:不正や多額の追徴が見込まれる事業者
まずそもそも、税務署はなぜ調査対象者を選ぶ必要があるのでしょうか?
理想は全ての事業者を調査して、適正公平な課税を実現させることでしょうが、税務署も当然ながら、調査にかけられる時間と人数が限られています。
税務署が税金を徴収するために支出している費用(調査官の人件費を含む)も、税金で賄われているわけです。
つまり、支出した税金より回収する税金の方が多いところを調査しないと、採算が合わないということになります。
僕が税務調査官だった頃も、
「最低でも自分の給料以上の金額は稼いでこい。」
と言われていました。
極端な話、そうでないと調査官が雇われている意味がないですしね。
つまりメインは、”多くの税金の追徴ができそうな事業者”を選ぶわけです。
では”多くの税金の追徴ができそうな事業者”はどうやってわかるのでしょう?
主なパターンとしては次のとおりです。
KSKシステムで調査優先度が割り出される
外部からのタレコミが入る
取引先の資料などから把握
KSKシステムで調査優先度が割り出される
国税組織が持つ、全国の納税者の申告情報を一元的に集約する
"KSK(国税総合管理)システム"。
日本語のまま頭文字を取ってしまう残念なネーミングセンスとは裏腹に、このKSKシステムは、登録されているあらゆる情報を基に調査優先度をスコアで示すことができます。
特に納税者が恣意的に数字を操作している場合、システムによって異常値と判断されやすく、必然的に調査優先度が高くなるといった仕組みです。
以前は一部のベテラン調査官が、決算書の数字から長年の勘によって判断していたものですが、現在はIT技術で誰でも見つけやすくなったと言えるでしょう。
外部からのタレコミが入る
時々、一般の方から税務署へ電話がかかってくることがあります。
「事業主の〇〇は売上を誤魔化している。」
「専務が会社の金を横領している。」
多くの場合、事業主と従業員の間で、給与未払いなどといった金銭トラブルがあり、こういった連絡につながることがあります。
ただこの場合、連絡してこられる方は税務について素人であるケースが多く、通報者の個人的な怨みのバイアスがかかっているため、信ぴょう性については慎重に判断します。
したがってこの情報だけで税務調査に入るという可能性は低いでしょう。
取引先の資料などから把握
契約書、請求書、領収書といった証憑類は、取引先にも保存されます。
ある事業者に税務調査が入った際、そこで把握した情報を基に他の取引先の不正がわかり、芋づる式に調査に入ることもあります。
中には取引先と通謀して、恣意的に両方の保存書類を改ざんするケースもあります。
ただしそれをやっちゃうと重加算税と言って、通常より多くの加算税を追徴されることになるため、絶対に不正には手を出さないことをおすすめします。
その他にも、税務署は日々あらゆる方法で取引情報などを収集しており、全てを回避することは極めて困難なため、申告を誤魔化しても基本税務署にはバレると思って良いでしょう。
特徴2:国税局が注目している業種である
2つ目の特徴は、国税局が注目している業種であることです。
様々な要因から、特にお金が流れている業種が選ばれる傾向にあるようです。
わかりやすいもので言うと、災害復興特需が挙げられます。
例えば九州で震災が発生した場合、復興のため土木や建築業といった業種に多くの需要が生まれます。
そうすると一度に多くのお金が建築業等に流れるため、該当地域の国税局は業種全体の脱税に対して警戒を強める、といったイメージです。
やはり儲かっている事業者こそ魔が差しやすいので、今景気が良い業種にいる方は若干意識しておいた方が良いのかもしれません。
特徴3:設立以来一度も税務調査を行なっておらず情報が少ない事業者
3つ目の特徴は、設立から長年立っているにもかかわらず、一度も税務調査を行なっていない事業者です。
税務調査は税金の追徴はもちろん、同時にその事業者の情報を収集することも目的としています。
そのため、情報が少ない事業者があった場合、一度税務調査できちんと調べてみる、といった判断がなされるケースも考えられます。
とはいっても先ほど挙げたように、最優先で調査すべきは追徴が見込まれる事業者なので、情報収集目的での調査を行う件数自体はそこまで多くないと言えるでしょう。
税務調査が入ったからといって怖がる必要はない
最後に、税務調査を怖がる必要はないと言うお話をします。
ここまでの内容でもお分かりいただけるかと思いますが、税金を恣意的に誤魔化そうとしていなければ、税務調査はただの手続きチェックにすぎないということです。
調査官も追徴が発生しない事業者にあまり時間をかけたくないのです。
調査官によっては少々厳しく詰められることもあるかもしれませんが、そういった場合でも毅然と対応していれば大丈夫です。
税務調査官も一応人間なので、素直な態度で誠実に応対していれば意外とすんなり終わることもあります。
さいごに
ということで今回は税務調査の対象者に選ばれやすい事業者の特徴というお話をしてきました。
正直、普通に個人事業主をしていた場合、税務調査は一生に一度経験するかどうかといった確率だと思います。
ただやはり法人化したり大きく稼いだりすると、税務署の警戒も強まってくるため、きちんと準備しておく必要はあるでしょう。
とはいっても悪意がなければ行政の手続きチェックぐらいの感覚で終わることも多いため、必要以上に怖れることはありません。
この記事を読んで、少しでも税務調査に対する不安が払拭できた方がいましたら幸いです。
ありがとうございました。