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2022年4月 小豆島

昨年、断念せざるをえなかった小豆島行き、やっと叶った。徳島生まれのカミさんが一度も行ったことがないというので、そりゃあかんやろ、と計画していたのだった。ぼくは高校生の頃、高松の叔母夫妻に連れてきてもらったことがある。
いつものLCCと違って、今回はANAを奮発。機窓から、八ヶ岳、南アルプス、中央アルプス、北アルプスなどの山々を眺めることができて、持参した本を読む暇がなかった。

甲斐駒ケ岳、仙丈ヶ岳、北岳など見下ろして飛ぶ。気持ちいい。

高松空港からバスで高松港へ。高速船で小豆島入りする。日曜だけど乗客は少ない。実は、3日後から大イベント瀬戸内芸術祭が開幕する。

高速艇正面にはオリーブのキャラクター。

高松港を出ると、右手に屋島を眺めながら30分ほどで小豆島の土庄港へ着いた。ぷうんとごま油の匂いがする。
早速、レンタカーを借りて、ちょうど干潮なので、エンジェルロードに向かった。

まだ完全には繋がっていないけど、裸足になって砂州を渡る人もいた。

まずはオリーブ園へ向かう。少し前のブラタモリで小豆島が登場して「食の宝島!小豆島を生んだアツ~イ理由とは?」をお題にしていた。今回、訪ねようとしている場所はだいたい取り上げられていた。オリーブ園の原木も出てきた。原木をチラリと見てから、お買い物。オリーブオイルや石けんなど。精算時に、花の季節は花粉症が出るでしょ、と訊くと、スタッフがそうなんです、と。実はスペインでエライ目に遭ったんだよ、と話したら、日本の人には分からないですよねと笑われた。

なかなか貫禄のある古木だった。

今朝は始発電車で羽田に向かったので、お腹が空いている。お昼ご飯にしようと、自家工場でそうめんを製造してる、なかぶ庵に向かうと、コロナ対策で予約制だと言われた。先にお醤油屋さんへ行くことにすると言うと、余裕をみて12時45分からの予約にしておきますねと調整してくれた。ヤマロク醤油までは500mもない。細い道を入る。軽自動車で良かった。蔵の前まで行くと、いい香り。裏手広場に駐車するよう案内され、まずは蔵の中を見学。こちらは昔ながらにすべて木の桶で仕込みしている。最近は桶を作る職人さんもいなくなり、やむを得ず自社で木桶も作っていて、新政など日本酒醸造に木桶を使いたい酒蔵は、みなこちらで勉強させてもらっているというのは日本酒好きの間ではよく知られた話。できてから何年経ったか分からないという古い桶がいきなり入口近くにあった。そもそも蔵の中には無数の酵母菌や乳酸菌が住み着いていて、木桶にも同様に菌が付いている。同じように同じ時に仕込んでも、桶によって、年によって、仕上がりは異なってくるのだそう。それにしてもいい香り。温度管理は自然任せ。今日のように天気がいい日は、扇風機を桶の周囲に置いて、外気を取り入れている。

この木桶は100年ぐらいのものらしい。
手前の桶は一度2年ほどかけて仕込まれた生醤油をもう一度仕込んでいる最中。

できあがった醤油の味比べをさせてもらった。二度仕込みをして深いコクをもつ鶴醤(つるびしお)、2年仕込みでキレのある旨味の菊醤(きくびしお)、新しい木桶で仕込み、絞ったばかりのフレッシュな新桶初しぼり、ポン酢、出汁醤油の5種。いやそれぞれ旨い。鶴醤で漬け込んだアーモンドも各種醤油と一緒に買い求めた。5代目当主が継いだときは、潰れるかもしれないという状態だったそうだが、がんばって繁盛店にされた。お客対応も丁寧で気持ちのいいものだった。

5種の味見。
ヤマロク醤油の全景。

さて、なかぶ庵に戻ってランチタイム。出来たての生素麺をいただく。おお、小麦粉の旨味を感じる。生オリーブ素麺も緑の色合いが爽やか。生麺は持ち歩けないので、乾麺を買い求めた。どんどん土産が増えていく。

細い麺はもっちりしていて美味しい。

食後は、海沿いに立つ島内最大の醤油工場、マルキンへ。道路を挟んで工場が建ち並んでいる。こちらにはマルキン記念館がある。昔の道具類や、歴史資料などが展示され、400円の入場料で醤油を1瓶お土産にもらえる。

マルキンは現在は名古屋に本社がある盛田食品のグループ会社となっている。
黒い舟板塀の大きな工場の裏手に回り込むと、こんな仕掛けがあった。
内部には木桶があり、スイッチを押すと醤油の香りが漂ってきた。

醤油の町から、湾を包み込むような岬の先へ行くと、そこは二十四の瞳の舞台となった分教場跡。折しも桜が満開の花びらを散らせていた。

大石先生は毎日、遠く離れたお家から自転車で通っていた。

さらに先へ進むと、映画のロケ用オープンセットを活用した映画村がある。村内には壷井栄文学館、二十四の瞳を上映する映画館などが建ち並んでいる。菜の花畑の上に鯉のぼりが泳いでいた。一通り見て回った後は、醤油アイスクリームを味わった。ヤマロクのひしおを使っているそうで、美味しかった。

菜の花の向こうに銅像が立っている。
教室の内部。ぼくの小学校時代にはさすがにもう少し近代化されていたなあ。

ホテルに入る前に、丘の上のまめまめビールに行きたい。車で探していると、妙なものがあった。美井戸神社、とあるが、ん? なんじゃこれ。解説板を読むと、2013年に芸術祭でビートたけしがヤノベケンジと作ったアート作品なのだそうな。そうか、だからビイト神社なのだ。20分ごとに水を吐き出すとは、帰宅後調べて知った。待てば良かったか。
一度、下の方におりて、駐車場に車を駐めて、細い道を登っていくと、車が走れないほど狭い道に面して、小さな民家があり、そこがまめまめビールだった。

こんな細い坂道を登っていった。

醸造スペースは本当に小さなもの。まさにマイクロブリューワリー。この日は5種類のビールが買えるとのことで、くろまめまめ、きんまめまめ、DADADA W-IPAの3本を買った。5年前からビールを造っていると奥さん。裏庭にはテーブルが置かれていて、こちらで吞むこともできるが、後で港近くの屋台に行くつもり。しかも車だしね。屋台が開店する日曜を狙って来たんだよ、と話すと、喜んでくれた。

右手の部分が醸造スペースになっている。

さて、一度ホテルにチェックインしよう。まめまめビールに近いから決めた宿は、ベイリゾートホテル小豆島。今朝、高松空港に向かって飛行機が高度を下げ始めたとき、機窓からちらっと見えた。

最上階は天然温泉の大浴場。海を見下ろすことができる。露天風呂からは反対側の海も見える。

チェックインして、部屋でゆっくりするというカミさんを残して、ひとり坂手港へ向かう。途中の見晴しの丘に登ると、港がよく見えた。

海上保安庁の船が停泊中だった。

丘を下り、坂手港方面へ行くと、まめまめビールのきまぐれ屋台があった。

土日の夕方のみ営業。

17時開店前だったが、いいですよと店主が応対してくれた。飲み比べ3種、あかまめまめ、くろまめまめ、しろまめまめ。

どうして、まめまめという名前を付けたのか訊ねるのを忘れてしまった。
テーブルに着くときに、お盆を揺らしてしまって、少しこぼしてしまった。もったいない。

あかはレッドエール、くろはヤマロク醤油のもろみを使った黒ビール、しろは島のハーブや柑橘を使ったホワイトエール。どれも個性的でいいねえ。とくにしろは期待以上にインパクト大。やがて若者がひとり入ってきて、店主の近くで呑み始め、いろいろ話し始めた。ブラジルで2年暮らしたことがあるそうな。ほう。それにしてもまめまめビール、美味しかった。ホテルの夕食前に帰って、温泉にも入らなくてはならないので長居はできない。精算時に店主に屋台開店に合わせて日曜に島へ来た、と話したら、さっき上の醸造所に来て下さった方ですか、妻から聞きました、と言ってくれた。しろが意外に美味しかったと感想もしっかり伝えた。
で、ホテルへ戻り、最上階の温泉大浴場へ。海を見下ろして入浴。露天風呂からは坂手港方面の海も見える。部屋へ戻り、冷蔵庫で冷やしておいたきんまめまめを吞む。こちらはなんと日本酒でもないのに米麹を使っている。ほう、こうきたか、という旨さ。

原材料は、麦芽(90%以上使用)、ホップ、米麹、米、炭酸。アルコール分7%。

時刻は18時過ぎ、9階の部屋から窓の外を見れば、夕焼けていく海と空。ほおお。

ホテルの部屋からの眺め。

夕食はバイキング形式。こういうご時世なので、マスク着用、手袋をして料理をとっていく。野菜が美味しそう。数種類のオリーブオイルが用意されている。牛肉はオリーブ牛。さらに目の前で揚げてくれるオリーブオイルフォンデュ。

オリーブオイルで揚げたタケノコ、エビ、肉団子。

刺身はサワラが美味しかった。ハマチとワカメのしゃぶしゃぶも。春物ワカメが美味しい。そして、お代わりしてしまったのが、シンコの釜揚げ。こういうのが瀬戸内の魅力だなあ。

シンコの釜揚げ。生姜醤油でいただく。めっちゃ美味。

飲み物もフリードリンク、日本酒は香川の地酒だそうだが、悦凱陣が置いてあるはずはなく、知らない名前の酒で味もイマイチ。むしろ安物の白ワインの方がありがたい。1時間ちょっとで引き上げた。
一服してから、ふたたび温泉へ。風呂上がりに、今度はDADADA W-IPA。しっかり濃い味で旨い。

アルコール分8%。

翌朝もよく晴れた。朝風呂。朝食もバイキング。大きなボウルいっぱいの汲み上げ豆腐、7~8種類くらい醤油が置いてあり、選べる。辛口濃いめの醤油を選択。豆腐も醤油も美味しかった。自分で作る丼も。醤(ひしお)に漬けた魚、岩海苔、ゴマ、青ネギ、シラス、佃煮などをご飯の上にトッピングし、だし汁をかけて食べる。こりゃ食べ過ぎてしまう。

セルフ醤丼。

さあ、島内巡りに出発。東海岸から北海岸沿いに島をぐるり回る。坂手港にはジャンボフェリーが入っていた。神戸と小豆島間を結んでいる。

神戸までは3時間。

埠頭には、ここにもアート作品。

スター・アンガー。

小さな半島を回り込み、東海岸を北上すると、道路の左側に見事な桜並木があった。

かなり散ってはいたが、まだまだ花盛り。

後ろを振り返れば、天狗岩丁場との案内板。昔、大阪城築城のため石を切り出した石切場のひとつ。ここは黒田藩が仕切った。大きな花崗岩がまだ残っている。当時伐り出した痕跡や目印に付けた刻印も見られる。日本遺産に指定されているとも。

巨岩がごろごろしている。

福田港を過ぎ、島の北側へ出てしばらく走ると、突然、辺り一面真っ白になった。海から霧が湧いているようだ。びっくりする。
日生と結ぶ港、大部を過ぎてしばらく、大坂城残石記念公園。切り出されたが、もう不要と大阪へ運ばれなかった石材、残念石がたくさん残る場所。公園と資料館、道の駅が併設。

残念石にも桜が彩りを添えていた。
海の霧が残っていた。

海岸線を離れ、土庄方面へ。そして、左へと入り、山間の道を分け入る。棚田が続く。中山千枚田と呼ばれる名勝。ブラタモリにも出てきた。棚田もさることながら、周囲の山の新緑が美しい。

土庄の町へ向かい、ランチタイム。選んだのはイタリアン。ブォン・コンパーニョ。市役所の近く。小さな店でシェフひとりで切り盛りしてるから、予約必須。シェアランチを選び、パスタとピザの種類をチョイス。前菜からすごいボリューム。野菜がやはり美味しい。パスタはツナのペペロンチーノ。ここまででかなり満腹状態。ピザはマルゲリータ。これがめちゃくちゃ旨かった。イタリアで食べたピザを思い出した。皮が薄めでもっちり。軽い感じでどんどん食べられる。パスタの皿は、シェフが残ったソースをピザの耳に付けて食べると美味しいですよ、といって置き残してある。言われた通り、耳にこのタレを絡めると確かに美味しいわ。結局、デザートまでペロリといただいた。それで1人前1400円。車でなきゃワイン呑めたのになあ。

マルゲリータ。薄い皮がもっちり旨い。

市役所の前には細い川、ではなく、海峡。世界一狭い土渕海峡。ギネスブック認定だと。

土渕海峡。

エンジェルロードから西へ丸っこい半島を一巡り。樹齢千年のオリーブ、というのを見に行く。スペインから移植したそうで、立派な枝振り。

さらに先へ。海際の洞窟にお堂があるという江洞窟。大きな岩をくりぬいた中に祀られていた。

小豆島霊場第60番、江洞窟。ほぼ海面レベルにお堂がある。
堂の屋根は岩にめりこむように建てられている。

小豆島最西端、戸形崎。小学校の校庭でゲートボールしてる。海岸はウミガメが一度産卵に来たという。砂浜の先に鯉のぼりが数十匹。ここの鯉のぼりは、来る時に高速艇の中からも見えた。

端っこにウクライナ国旗。

さて、一巡りし終えてもまだ時間がある。西海岸を北上して、沖島が見えるところまで行ってみた。沖島は小豆島本島から100mも離れていない。が、橋はない。渡し舟があるはず、と車を走らせながら注意していたら、小さな看板を見つけた。狭い小路の先が渡し場みたい。車を駐めて、行ってみると、ぼくでも泳いで渡れそうなほど近い。しばらく写真を撮ったり、うろうろしていたら、対岸に小舟がいて、船頭らしき方がこっちを伺っている。ちゃんと時刻表も掲示してあるが、ひょっとしたら融通をきかせてこっちへ来るつもりかもしれない。迷惑をかけてはいけないので、さっさと姿を消した。一人旅なら、絶対、渡りたかったけどな。

こんな表示が道端にあっただけ。見落とすよね。
ここが船着き場。

土庄港へ戻り、レンタカーを返却し、港へ。ちなみに小豆島のレンタカーは高い。軽自動車2日間で1万円ちょっと。これでも最安だった。さて、高松へ戻るとしよう。

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