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201612 美しい棚田が残る新潟の山里で味噌作り

 昨年、知人に誘われて初めて味噌作りに挑戦した。教えて下さる先生は新潟県十日町市松代(まつだい)の女性。味噌を仕込んだのは、山里が深い雪に埋もれる2月。地元産の大豆を蒸かし、すり鉢とすりこぎで丁寧に豆を潰し、塩を混ぜ、隙間なくプラスティック樽に詰めて、倉庫で寝かすこと半年あまり。

 晩秋、出来上がった味噌を引き取りに出かけた。越後湯沢から北越急行ほくほく線に乗り換え、まつだい駅で下車。車で来ていた知人と画家の先生に拾ってもらい、会場の公民館へ。一緒に味噌作りをした10名ほどの皆さんが参加する。さて、どんな風に出来上がったのだろうか、期待に胸が高鳴る。

 仕込む際にいろいろ注意された中で最も重要なことは、いかにカビを生えさせないか。当然、手は念入りにアルコール消毒するし、樽に詰める際は空気が入り込まぬよう、ぎゅっぎゅっと押し込みながら詰め、上面はラップフィルムで密閉し、はみ出した味噌をきれいに除き、仕上げはアルコール消毒。

 仕込んだグループ毎にそれぞれの樽を囲み、いざ、ご対面。ぼくと一緒に同じ樽に仕込んだ人達は都合が悪くて引き取りには来ていない。ひとりで蓋を開けると、おお、いい香り。ラップフィルムの周囲にうっすらカビが付いているが、丁寧に拭き取れば問題ない。指ですくって嘗めてみる。ほんのり甘く美味しい。底からよく混ぜると、味が少し変わった。他の樽の味もお互いに見させてもらう。同じ日に同じように教えてもらい作ったのに味は明確に違う。塩気の多さ少なさ、荒々しい出来もあれば、滑らかなものもある。しかし、ひいき目ではなく自分が作った味噌が一番美味しい。と、全員が同じように思っているのが可笑しかった。

 味噌を1キロずつビニール袋に取り分ければ作業終了。あとは、先生作のお茶請けをいただきながら、お茶飲みタイム。これが最高の贅沢。大根の酢漬け、落花生おこわ、茄子と茸の煮物、ナメコと生姜煮、大根煮物、カリフラワーのカレー炒めなどなど。すべて、先生が栽培したか、採ってきたものを、ご自身で今朝料理して下さった。

 この日は、山の上の宿、まつだい芝峠温泉雲海に泊まった。宿に向かう途中、紅葉の山々の間に点在する棚田を見て歩く。松代には多くの棚田が残っており、撮影に訪れる写真愛好家も多い。段々に重なる小さな田を耕作するのは大変だと思うが、地元の方々が大切に守り伝えてきた宝物。外国から訪れる観光客の皆さんにもぜひ見たいただきたい風景である。

 宿の露天風呂からは、遠くは苗場(なえば)山、巻機(まきはた)山など雄大な景色を楽しめる。さらに天候条件が整えば、見事な雲海が見えるはず。夕食後、暗くなった下界に雲が少しかかったが、海のようにとまではならず、翌朝を楽しみに寝た。

 翌朝、同室の先生から雲海が見えると起こしてもらった。6時前。確かに白い雲が立ちこめている。早速、露天風呂へ。雲が広がっていて下界は見えない。次第に雲間から朝日が差し始め、眺め続けていても見飽きない。

 棚田米が美味しい朝ご飯をいただいた後、美しいブナ林、その名もズバリ美人林を訪れた。木立の中に地元のお年寄りを撮影した大きな写真が展示されていた。葉が色づいたブナ林は本当に美しい。空気も一段と美味しい。身も心も洗われて清々しい気分。

 お昼は、清津峡(きよつきょう)せとぐちという蕎麦屋の囲炉裏端で香り高い茸蕎麦をいただいた。紅葉に彩られた周辺は秋一色だったが、エアポケットのように不思議な一角があった。風が遮られているためか、そこだけ周囲より温度が数度高い感じ。田の畦の斜面にスミレやタンポポが咲いていて、まるで春の景色だった。

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